#501 「医療法人A会事件」新潟地裁
2019年12月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第501号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【医療法人A会事件・新潟地裁判決】(2018年3月15日)
▽ <主な争点>
賞与の支給額の差異と労働契約法20条違反など
1.事件の概要は?
本件は、A会に非正規職員として雇用されていたXが雇用期間中、正規職員には冬季賞与として基本給2ヵ月分の賞与が支給されるのと異なり、非正規職員には基本給1ヵ月分しか支給されないことは期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法20条に違反すると主張し、冬季賞与として支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額である基本給1ヵ月分の給与相当額17万円余の支払を求めたもの。
原審(新潟簡易裁判所)がXの請求を認容したため、A会が控訴し、これに対してXが附帯控訴した。
2.前提事実および事件の経過は?
<A会およびXについて>
★ A会は、平成5年11月に設立された医療法人であり、病院、診療所、介護老人保健施設、介護付有料老人ホーム、通所介護事業、通所リハビリテーション事業、訪問介護事業、訪問看護事業、訪問リハビリテーション事業、居宅介護支援事業、地域包括支援センター、認知症対応型共同生活介護事業および小規模多機能型居宅介護事業の運営等を行っている。
★ Xは、27年4月、A会との間で有期雇用契約を締結し、介護老人保健施設所属の事務職員として、総務的業務、経理的業務および勤怠管理業務等に従事していた者である。
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<A会における正規職員と非正規職員の相違等について>
★ A会の従業員には就業規則上、正職員と準職員の区分があったのとは別に、無期雇用として「常勤1」および「常勤2」、有期雇用として「常勤3」「常勤4」「非常勤1」などの呼称が用いられていた。
★ 無期雇用契約職員である正規職員は正規職員就業規則所定の正職員であり、常勤1および常勤2がこれに該当する。有期雇用契約職員である非正規職員は非正規職員就業規則所定の準職員であり、常勤3、常勤4、非常勤1などがこれに該当する。
★ 勤務の異動に関して、正規職員は業務の都合により異動を命ぜられることがあり、正当な理由なく拒むことができない一方、A会は非正規職員に対しては労働契約書で契約期間中の就業場所を限定している。
★ 賞与に関して、正規職員には毎年業績・職員の勤務状況等を勘案して支給される。一方、非正規職員には個別の契約に基づいて賞与が支給される。
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<本件賞与条項、Xの退職等について>
▼ A会は契約期間中において、雇用契約に基づき、Xに対し、27年7月に夏季賞与(祝儀)として3万5000円、同年12月に冬季賞与として17万5000円をそれぞれ支払った(以下「本件賞与条項」という)。
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