#491 「新井鉄工所事件」東京地裁
2019年7月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第491号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【新井鉄工所(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2018年3月29日)
<主な争点>
唯一の事業の廃止に伴う整理解雇など
1.事件の概要は?
本件は、A社に雇用されていたXら8名が同社の主要な事業である油井管製造事業の廃止に伴って解雇されたことが解雇権の濫用に当たり労働契約法16条(解雇)により無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<A社およびXらについて>
★ A社は、原油や天然ガスを掘削するために使用される油井管のカップリング(油井管をつなぐ継手部分)とドリルパイプ(掘削するためのドリル式のパイプ)の製造および販売等を主たる事業とする会社であり、過去50年以上にわたり、上記の2製品に特化して製造、販売事業を営んできた。なお、A社は平成12年以降、B社との間でカップリング等の取引を継続しており、B社はA社の主要な取引先であった。
★ Xら8名は、昭和52年から平成15年までにA社に入社した者であり、全日本金属情報機器労働組合東京地方A社支部(以下「組合」という)の組合員である。
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<本件解雇に至った経緯等について>
▼ A社は27年12月、組合に対して、28年3月末をもって油井管製造事業から撤退すること、従業員に対しては希望退職を募ること、希望退職に応じる従業員に対しては、割増退職金を支払うことを口頭で説明した。
▼ A社と組合は27年12月以降、合計21回にわたって、団体交渉を行った。
▼ A社は28年3月、全従業員に対して、退職日を同年4月15日とし、会社都合の退職金に加えて、年収1年分の特別加算金を支払うこと等を条件とする希望退職募集を行い、同年3月末日で油井管製造事業から撤退した。
▼ 組合とA社は、同社が油井管製造事業から撤退した後も団体交渉を続けていたが、組合は28年8月、金銭解決の条件として、Xらの60歳定年までの賃金、退職金および一時金、定年後継続雇用した場合の賃金および退職慰労金の総額約10億円のほかに争議解決金の支払を要求した。
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