#274 「京都新聞COM事件」京都地裁(再掲)
2010年12月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第274号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【京都新聞COM(以下、K社)事件・京都地裁判決】(2010年5月18日)
▽ <主な争点>
契約社員の更新に関する「3年ルール」の説明等
1.事件の概要は?
本件は、契約社員であったAら2名が雇用契約を更新しない旨の通知をK社から受けたため、主位的に、AらとK社との雇用契約は更新が繰り返された結果、期間の定めのない雇用契約に転化しており、当該雇止めは無効であると主張し、予備的に、期間の定めのある雇用契約であったとしても解雇権の濫用にあたると主張して、K社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認および賃金の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社、AおよびB等について>
★ 京都新聞社(以下、K新聞社)は、平成13年4月、社内にあった企画事業局、メディア局出版部の業務を京都新聞企画事業(以下、企画事業会社)に委託するようになった。
★ K社は、18年4月、K新聞社の事業部門である新聞の販売、広告等の各業務について、同新聞社の委託により、それらを行うために同新聞社の全額出資により設立された子会社である。従前、企画事業会社の企画制作部で担当していた業務の一部は、同月からK社に承継されることになった。
★ Aは、13年6月、企画事業会社との間で、雇用契約期間を6ヵ月とする雇用契約を締結して企画事業会社で勤務し、18年4月からK社で勤務するようになった。
★ Bは、16年5月、企画事業会社との間で、雇用契約期間を11ヵ月とする雇用期間を締結して勤務を始め、18年4月からK社で勤務するようになった。
★ K新聞社グループにおいて、契約社員については、昇進はなく、退職金も支給されないことから、終身雇用者との比較による不満が生じないようにするため、雇用契約期間は3年間を上限とし、それ以上の更新を認めない方針を採用し、11年4月からK新聞社において実施し、その後企画事業会社においても実施されたが、支局等での採用者、身体障害者、定年退職後の再雇用者には適用せず、また、印刷部門も業態が異なるため適用しないなど例外があった。また、K新聞社やK社においては、契約社員でも正社員への登用試験に合格すると正社員になることができる制度があった。
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<本件雇止めに至った経緯等について>
▼ Aは上記の間、企画事業会社との間で、13年12月、14年4月、同年10月、15年4月、同年10月、16年4月、17年4月に雇用契約を更新し、K社に移籍してからは、19年4月、20年4月に契約を更新した(16年4月から雇用契約期間は1年となった)。
▼ Bは上記の間、企画事業会社との間で、17年4月に雇用契約を更新し、K社に移籍してからは、19年4月、20年4月に契約を更新した(雇用契約期間は1年であった)。
▼ Aらは18年2月、K社との間で雇用期間を同年4月から19年3月までとする契約社員雇用契約書を取り交わした。その契約書では企画事業会社の場合と同様、雇用契約期間が明記され、「雇用契約の期間が満了したときは、本契約は当然に終了する」旨記載されていたが、契約更新の上限を3年とする旨の記載はなかった。
★ Aは当初、国土交通省の国道工事事務所から委託された業務を行っており、そのために採用されたものであるが、14年からは広告記事について、広告主と打ち合わせて記事の作成等を担当していた。Bもほぼ同様であり、広告記事の作成やイベントの開催等の業務を担当していた。また、Aらは契約期間満了が近づいても、翌年度も継続する業務を任されて担当していた。
▼ K社は20年6月、Aらに対し、21年3月をもって雇用契約を更新しない旨の通知をした。さらに、K社は仮に、その効力が生じない場合に備え、22年3月3日の本件口頭弁論期日において、Aらに対し、同月31日をもって雇用契約を更新しない旨の通知をした(以下、これらを「本件雇止め」という)。
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