#51 「鳥屋町事件」金沢地裁(再掲)
2004年8月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第51号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【鳥屋町(以下、T町)事件・金沢地裁判決】(2001年1月15日)
▽ <主な争点>
退職勧奨に応じなかったことを理由とする昇給停止
1.事件の概要は?
本件は、T町は退職勧奨制度につき、男性58歳、女性48歳を勧奨退職年齢としており、(1)地方公務員法※ に反し、違法であること、(2)女性職員Kが退職勧奨に応じなかったことを理由に昇給を停止したとして、昇給していた場合との給与の差額の支払いを同町に対して求めたもの。
※ 一般職に属するすべての地方公務員には労働基準法ではなく、地方公務員法の規定が適用される。
2.前提事実および事件の経過は?
<T町およびKについて>
★ T町は石川県鹿島郡にある人口約6000人の町である(後に合併により中能登町となった)。
★ Kは昭和45年5月、T町の役場事務補助職員として採用され、勤務を始めた者である。平成8年4月には保健環境課主査、10年4月からは上下水道課主査となった。
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<本件退職勧奨制度とKに対する退職勧奨等について>
★ T町においては、行政職の職員について、男性58歳、女性48歳の退職勧奨制度(以下「本件退職勧奨制度」という)があり、上記各年齢になる前年度の2月頃、当該職員に対して、退職を勧奨していた。
★ 石川県内で男女差のある勧奨退職制度をおいている市町村は、平成10年度において、8つの市のうち1市、33の町村のうち29町村であった。
▼ T町はKに対し、平成9年3月に48歳になることを理由に、8年2月、退職を勧奨した(以下「本件退職勧奨」という)が、Kはこれに応じず、退職届を提出しなかった。
▼ T町の総務課長は、Kの夫の会社の同僚であるSに対し、Kの退職勧奨について、Kの夫の意見を聞きたいとして、呼び出すことを依頼した。Sは8年3月、K宅を訪問して、その旨Kの夫に申し入れたが、Kの夫はこれを断った。
▼ その後、T町の町長および助役はKを町長室に呼び出し、Kに勧奨退職に応じない理由を聞いたところ、Kはもう少し勤めたい旨を述べた。9年2月、Kは同町から再度勧奨退職の用紙を交付された。
▼ Kは町長宛に8年4月1日付で「今しばらく勤務させて頂きたく、申し入れ致します」等と記載した申入書を、9年2月28日付で「本年も勤務したいと思いますので、その旨を申し入れ致します」等と記載した申入書をそれぞれ作成して交付した。
★ T町の職員中、昭和61年以降、退職勧奨年齢以降も勤務を続けた者は、61年に女性1名がいた他は、K以外にはいない。
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<本件出勤停止と公平委員会の判定等について>
★ T町においては、職員の給与について「一般職の職員の給与に関する条例」(以下「本件給与条例」という)が制定されており、「職員が現に受けている給料の号給を受けるに至ったときから、その号給について12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは一号給上位の号給に昇給させることができる」と規定されている。
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