#365 「日本郵便事件」東京地裁(再々掲)
2014年7月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第365号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【日本郵便(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2013年3月28日)
▽ <主な争点>
長期間の無断欠勤を理由とする懲戒解雇など
1.事件の概要は?
本件は、N社において郵便物の集配業務に従事していたXが主位的には懲戒解雇(長期間の無断欠勤を理由とする)は無効であり、同社に対して(1)労働契約上の地位確認を求めるとともに、(2)民法536条(債務者の危険負担等)2項に基づく賃金(月額平均48万円余)等の支払い、(3)賞与等の支払い、(4)N社による懲戒解雇は違法であるから、同社はXに対し不法行為に基づく損害賠償義務を負うと主張して、合計657万円余等の支払いを求め、予備的には仮に懲戒解雇が有効であるとしても、XはN社の退職金規程に基づき退職金請求権を有していると主張して、退職金781万円余等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<N社およびXについて>
★ N社は、郵便事業を営む会社である。
★ Xは、平成3年1月、N社との間で期間の定めのない労働契約を締結し、同社の城東支店において、郵便物の集配業務に従事していた者である。
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<本件懲戒解雇に至った経緯等について>
▼ N社は平成23年5月16日付「懲戒処分書」により、Xに対し、社員就業規則76条1項1号、2号および6号により戒告する旨の処分をした。その具体的な理由は「23年2月22日外務事務に従事中、外国来書留郵便物合計2通を紛失したものである」というものであった。
▼ 同年5月20日、N社はXと面談し、無断欠勤につき解雇と決定したこと、解雇は解雇でも諭旨解雇(退職願を提出することで退職金の支払いを受けて解雇となる)であること、退職願の提出を拒否する場合には懲戒解雇となり、退職金は出ないことを説明したところ、Xは退職願の提出を拒んだ。
▼ N社は同年6月3日付「懲戒処分書」により、Xに対し、社員就業規則76条1項1号および10条により解雇する旨の処分をした(以下「本件懲戒解雇」という)。その具体的な理由は「23年4月7日から同年5月16日までの間(本件期間)、みだりに勤務を欠いたものである(本件欠勤)」というものであった。
★ Xは上記事実に関し、同年5月16日付で「私は23年4月7日から同年5月16日までの間無断で欠勤しました。これは勝手な自己判断でした。この行動によって職場に多大な迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳ありませんでした。一社会人としてこのような行動は二度と起こさないよう気をつけたいと思います」と自筆で記載した始末書(以下「本件始末書」という)を作成し、N社に提出していた。
▼ Xは本件懲戒解雇に伴う解雇予告手当として(行政官庁による除外認定なし)、同年6月3日、N社から48万4887円を受領した。
★ Xが諭旨解雇に応じていた場合の退職金額は、781万1739円であった。
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<N社の社員就業規則の定めについて>
★ N社の社員就業規則には、以下のような定めがある。
第24条(勤務できないときの申出)
社員は、遅刻、早退、その他の事由により所定の勤務時間に勤務することができない場合には、あらかじめ所属長に申し出てその承認を得なければならない。ただし、病気その他のやむを得ない事由によりあらかじめ申出のできなかったときは、事後速やかに申し出なければならない。
第25条(無断欠勤)
所属長に申出なく所定の勤務時間に勤務しなかったときは無断欠勤とする。
2.申出があっても、その理由が正当なものでない場合は、無断欠勤として扱う。
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