#551 「みずほ証券事件」東京地裁
2021年12月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第551号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【みずほ証券(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2021年2月10日)
▽ <主な争点>
留学費用の返還債務免除特約付き消費貸借契約の有効性など
1.事件の概要は?
本件は、M社が、同社の公募留学制度を利用して留学し留学終了後5年以内に自己都合で退職したXに対し、主位的に、Xが留学した際にM社が支出した留学費用は、同社がXに貸し渡した貸金であると主張して、消費貸借契約に基づき、留学費用3045万0219円および遅延損害金の支払を求め、予備的に、M社・X間には、Xが負担すべき留学費用相当額を同社がXに代わって一旦支出し、Xが留学終了後5年間M社および同社のグループ会社で就労する場合を除き、XがM社に対して留学費用相当額を弁済する旨の無名契約が成立していたと主張して、同契約に基づき、留学費用相当額3045万0219円および遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<M社およびXについて>
★ M社は、みずほフィナンシャルグループに属する総合証券会社である。
★ Xは、平成23年4月、M社に入社し、アドバイザリーグループに配属され勤務していた者である。
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<Xの本件留学制度の選考への応募から退職までの経緯等について>
▼ M社は26年10月、同社の企業価値向上に貢献する人材を育成することを目的として、従業員のうち所定の条件を満たす者を対象に公募留学制度(以下「本件留学制度」という)の公募を行った。
★ 本件留学制度は国際的視点に立った視野の広い人材の育成、グローバルな環境下でリーダーシップを発揮できる人材の育成を主旨として、経営学修士(MBA)課程設置大学、ロースクール、公共政策大学院等を進学先として制定し、進学先地域についてはアメリカ、ヨーロッパ、アジアおよび国内の4地域から学校の選択が可能なものであった。
▼ Xは本件留学制度の選考に自ら応募し、27年1月、公募留学候補生として選抜され、28年7月から30年5月までの間、同制度を利用して留学した。
★ Xは上記留学に際し、M社に対し、「留学期間中に・・・特別な理由なく退職する場合あるいは解雇される場合、また、留学終了後5年以内に・・・特別な理由なく退職する場合あるいは解雇される場合には、当該留学に際し貴社が負担した留学に関する以下の費用を退職日までに遅滞なく弁済することを誓約いたします」と記載された誓約書(以下「本件誓約書」という)を提出していた。
▼ Xは30年6月に帰国し、M社の業務に復帰したが、9月に退職を申し出、10月31日付で自己都合により退職し、M社と同業の他社へと転職した。
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