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#445 「社会福祉法人 奉優会事件」東京地裁(再掲)

2017年9月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第445号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【社会福祉法人 奉優会(以下、H会)事件・東京地裁判決】(2016年3月9日)

▽ <主な争点>
出向命令の効力など

1.事件の概要は?

本件は、主位的にH会のXに対する違法な出向命令により、Xの出向後の給与および賞与が出向前よりも減額したとして、その差額について、不法行為に基づく損害賠償を求め、予備的に出向命令が有効であるとしても、上記差額について、出向規程に基づく補償を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<H会およびXについて>

★ H会は、特別養護老人ホームや老人デイサービスセンター等の経営等を行う社会福祉法人である。

★ Xは、平成23年4月からH会の正職員として介護業務に従事している者である。

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<本件出向命令に至った経緯等について>

▼ Xは24年4月にケアマネージャーの資格(介護支援専門員登録)を取得したが、H会はXをケアマネージャー職に就かせることはなかった。

▼ H会は提携関係にあるY社であれば、ケアマネージャー職のポストがあると考え、Xに対し、同社の面接を受けるように勧めた。

▼ 25年3月、Y社はH会に対し、Xをケアマネージャー職として採用することはできないが、SPM(サービスプロセスマネージャー。訪問介護事業におけるサービス計画を立てる職種)であれば採用することができる旨回答した。

▼ 同年4月、H会はXに対し、Y社への出向を命じた(以下「本件出向命令」という)。Xは同社において何ら異議を述べることなく、SPMとして勤務を開始した。

★ Xは「本件出向命令前後の給与を比較する際、残業代は除外した上で比較するべきであり、25年4月から26年3月までにY社から受領した給与と賞与の合計額は前年同期と比較して36万1398円減少しており、26年4月から12月分までに同社から支給された給与と賞与の金額は出向前である24年同期と比較して38万6142円減少しており、これらの差額分の合計額は74万7540円(以下「本件差額分」という)である」と主張している。

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<本件訴訟に至った経緯等について>

▼ Xは本件出向命令の無効確認ならびに出向前後の給与および本件差額分の支払を求めて、労働審判を申し立てた。

▼ 労働審判委員会は26年10月、「本件出向命令を解除して、H会においてXを勤務させること、Xはその余の請求を放棄すること」を内容とする労働審判をした。Xは同年11月、上記審判に対する異議を申し立て、上記事件は本件訴訟に移行した。

▼ Xは、H会が同年12月8日付で本件出向命令を解除したことから、本件訴えのうち本件出向命令の無効確認請求を取り下げた。

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<H会の就業規則、出向規程の定めについて>

★ H会は職員の出向に関して、就業規則で次のように定めている。

(人事異動)
第9条 法人は職員に対して業務上必要のある場合は、就労場所または業務内容の変更を命ずることがある。
 職員は正当な理由がないかぎり前項の命令を拒むことができない。
 第1項により異動を命ぜられた職員は、自己の行っている業務の引継ぎを確実に行わなければならない。

(出向)
第10条 法人は職員に対して業務上必要のある場合は、出向を命じることがある。
 職員の出向に関する事項は、別に定める「出向規程」によるものとする。

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