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#77 「労働政策研究・研修機構事件」東京地裁(再掲)

2005年3月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第77号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【労働政策研究・研修機構(以下、R法人)事件・東京地裁判決】(2004年9月13日)

▽ <主な争点>
会社からの出頭命令を拒否したこと等を理由とする退職手当減額

1.事件の概要は?

本件は、R法人を退職したAが、調査のための出頭命令を拒否したこと等を理由に退職手当を減額されたのは、同法人の内部告発に対する報復を目的とした懲戒権の濫用であり、また、裁量を逸脱するものであるから、違法かつ無効であると主張し、R法人に対し、(1)労働契約に基づく退職金未払い分または不法行為に基づく退職金未払い分相当額の損害賠償等、(2)その他の不法行為に基づく損害賠償の各支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<R法人およびAについて>

★ R法人は平成15年10月、特殊法人日本労働研究機構が組織変更をしたことにより成立した独立行政法人であり、同特殊法人の一切の権利義務を承継している(組織変更の前後を問わず、以下「R法人」という)。

★ Aは3年7月、R法人の事務職員として採用されたが、13年11月12日、同法人に対し、同年12月28日付で退職したい旨の申し出を行い、同年11月26日から12月28日まで連続して有給休暇を取得した後、同日付で退職した者である。

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<本件記事、本件退職手当減額等について>

▼ 13年12月10日発売の『週刊朝日』において、「お気楽特殊法人」、「あきれた実態第一弾」等という見出しで、現職員である「A氏」がR法人の実態を内部告発する趣旨の記事が掲載され、同月17日発売の同誌には上記記事の第二弾として、同趣旨の記事が掲載された(以下、まとめて「本件記事」という)。

▼ R法人は厚生労働省等に対して、本件記事につき速やかに説明する必要があったが、本件記事中で「A氏」が語った内容とAの経歴との間に一致する点が多いため、Aが本件記事の報道に関与しているのではないかと考え、Aが在職中使用していた業務用パソコン(以下「本件パソコン」という)の使用履歴の調査を行った。

▼ その結果、Aが内部文書を部外者に提供したり、就業時間中に他部署の文書データの閲覧をするなどしていた疑いが生じ、これらの行為は就業規則上の禁止行為に該当することから、R法人は直接Aから弁明を聴くこととした。

▼ 同年12月21日、R法人はAに対し、「本件記事について、退職前に話を聞きたいので、25日または26日にR法人まで出頭してほしい。これは業務命令なので、説明を聞く手続が終わらない場合には退職の承認ができないこともあり得る」などと記載したメールおよび内容証明郵便を送信した。

▼ これに対し、Aはこのままでは懲戒解雇されて退職手当がもらえなくなったり、R法人に出向くと職員に取り囲まれて詰問される等の恐れがあると考え、同法人には出向かずに様子を見ることにした。

▼ 同月28日、AはR法人に対し、「週刊誌云々については私が差し上げられる有益な情報はありません」などと記載したメールを送信した。

▼ R法人は14年2月、Aに対し、退職手当支給規定により算出された金額である495万4890円から、その100分の10に当たる49万5489円を減額して支払った(以下「本件退職手当減額」という)。

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<R法人の就業規則等の定めについて>

★ R法人の就業規則には、以下のような定めがある。

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