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#186 「日本曹達事件」東京地裁(再掲)

2007年7月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第186号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日本曹達(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2006年4月25日)

▽ <主な争点>
障害者枠採用・正社員契約前の嘱託契約期間/退職勧奨の有無

1.事件の概要は?

本件は、N社の社員であったXが同社から合理的な理由もなく、障害者であることのみを理由に差別的な取扱いをされた上、退職勧奨により退職を強要されたとして、N社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、慰謝料500万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社およびXについて>

★ N社は、塩素製品や農業用薬品等の各種化学工業製品の製造、加工、販売を目的とする会社である。

★ Xは、N社の社員であった者であり、先天性の形成不全症による右下肢機能障害を抱え、身体障害者等級では肢体不自由4級の認定を受けている。

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<Xの入社から退職に至った経緯>

▼ Xは平成12年10月、公共職業安定所主催の身障者合同就職説明会において、N社の採用担当者と面接をし、同社についての説明を聞いた。その後、XはN社の小田原研究所で個別面接および筆記試験を受け、さらに同年12月、誓約書を提出した上、N社の指定した病院で健康診断を受けた。

▼ Xは13年1月5日、小田原研究所に出社し、N社との間で、同月1日を始期とする6ヵ月間の雇用期間を定めた嘱託契約社員としての雇用契約を締結した。

★ N社は、障害者を障害者枠で採用する場合には、最初に6ヵ月間の嘱託契約社員として契約を締結し、6ヵ月間の嘱託契約期間を経てから正社員に移行させるという制度(以下「障害者枠制度」という)を採用しており、Xはこの制度によって採用されたものであった。

▼ Xは同日、小田原研究所研究企画部総務課に配属された。この当時、総務課には約10人の職員が勤務しており、そのうちXを含む2人が障害者枠制度での採用であった。その後、Xは同年7月1日、6ヵ月間の嘱託契約期間を終えて、そのままN社の正社員となった。

▼ 同月、健常者であるAが中途採用の正社員として、N社の小田原研究所に採用された。このため、Xは自分に嘱託契約期間が設けられたのは、自分が障害を抱えているからであり、そのことは障害者差別ではないかとの疑いを抱くようになった。

▼ XはN社に対し、障害者枠制度についての不満を伝え、説明を求めたが、同制度の趣旨について納得することができなかった。また、Xは公共職業安定所に赴き、N社の障害者枠制度に納得できない旨を述べた。

▼ XはN社と何度か話し合った結果、同月27日、同社に対し、一身上の理由により、同年8月10日付で退職することを願い出る旨を記載した退職願(以下「本件退職願」という)を提出して、同年8月10日に同社を退職した。

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<XがN社を退職してからの事情>

▼ 14年4月、XはN社に対し、障害者枠制度が障害者差別に当たるという内容の通知書を送付した。

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