#108 「練馬交通事件」東京地裁
2005年10月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第108号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 参考条文
★ 労働基準法
第39条(年次有給休暇)
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
(第2項以下、省略)
第136条
使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
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■ 【練馬交通(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2004年12月27日)
▽ <主な争点>
年次有給休暇の取得を理由とする賃金の一部(皆勤手当等)減額の違法性
1.事件の概要は?
本件は、タクシーの乗務員としてN社に勤務するAら4名がN社に対し、年次有給休暇(以下「年休」という)権の行使を理由に賃金の一部である皆勤手当および安全服務手当を減額することは、労働基準法(以下「労基法」という)39条、136条に違反し、私法上無効である旨を主張して、その減額分の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<N社およびAらについて>
★ N社は一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む会社であり、約270名の乗務員が在籍している。
▼ Aは平成6年5月に、Bは12年7月に、Cは13年3月に、Dは13年5月にそれぞれタクシーの乗務員として、N社に採用された。
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<Aらの勤務形態および年休権行使時の手当の取扱い等について>
★ Aら4名を含む隔日勤務制の乗務員は、始業時刻が午前7時45分、終業時刻が翌日午前2時15分とされ(以下、始業から終業までの勤務単位を「出番」という)、1ヵ月に11出番の勤務が割り当てられており、月ごとの勤務予定を記載した交番表が毎月配布されていた。
★ N社においては、乗務員が11出番を全て乗務した場合には、皆勤手当として5,500円を支給し、また、11出番を全て無事故無違反で乗務した場合には、安全服務手当として9,000円を支給し、乗務員に11出番完全乗務を奨励していた。
★ 乗務員が年休権を行使した場合には、安全服務手当が1出番につき4,500円(2出番以上は全額)減額され、また、皆勤手当は1出番でも年休権を行使した場合には全額減額されていた(以下「本件減額」という)。
▼ 本件減額分が実際に支給されたAらの賃金総額に占める割合について、最も割合が大きいのは14年5月にAが年休権を2出番行使した際の7.25%であり、最も小さいのは同年11月にCが年休権を1出番行使した際の1.99%であった。なお、N社の賃金制度は一部歩合給制を採っており、月々の賃金総額は各乗務員の営業収入に応じて異なっていた。
★ N社においては、未消化の年休日数に応じて手当を支給するといういわゆる年休の買上げ制度は設けられていなかった。
★ N社の就業規則によれば、「年休権を行使する場合には所定の手続により7日前までに所属長に届け出なければならない」とされていたが、実際には出番の直前に乗務員から年休申請がなされることが多く、代替要員の確保は実際上困難であった。
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<N社の給与規定について>
★ N社の給与規定には、次のような定めがあった。
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