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#613 「TWS Advisors事件」東京地裁

2024年5月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第613号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【TWS Advisors(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2022年3月23日)

▽ <主な争点>
業務委託契約と題して署名押印なく締結された契約が労働契約に当たるか否かなど

1.事件の概要は?

本件は、XがT社に対し、同社との間で締結した契約は業務委託契約ではなく労働契約である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認ならびに未払賃金の支払を求めるとともに、XがT社で就労していたにもかかわらず、同社がXに対し失業等給付を受給するよう指示したことにより、失業等給付に係る返還債務268万7448円の損害が発生した旨主張して、不法行為に基づき損害賠償の支払を求める事案(甲事件)、およびY社がXに対し、XとT社との間の業務委託契約が解消されたことにより、XとY社との間の使用貸借契約も終了したにもかかわらず、Xが違法に居住を継続した旨主張し、債務不履行、不法行為または不当利得に基づき、賃料相当損害金86万7225円の支払を求める事案(乙事件)の2つの事案である。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社、Y社およびXについて>

★ T社は、不動産の管理・売買・賃貸借およびその仲介等を目的とする会社であり、2019年10月に現在の商号に変更している。

★ Y社は、労働者派遣事業、有料職業紹介事業等を目的とする会社であり、T社の関連会社である。

★ Xは、2018年1月からT社の業務を行うようになった者である。なお、同年4月末日までA社と労働契約を締結して就労し、労働契約終了後の同年6月28日から11月24日までを対象期間として失業等給付を受給していた。


<Xの業務内容、社宅の提供、契約終了に至った経緯等について>

★ Xの業務内容は、主として不動産取引業務であったが、そのほかにもT社の開発事業部の従業員の管理および採用面接への出席、幹部会議の議事録の作成、同社が当事者となっている訴訟における書面の作成など多様であった。

★ 業務の実施につきT社とXとの間で契約書が調印されることはなく、同社からXへの金銭の支払は、「仮払金申請書/受領書」と題する書面(以下「本件受領書」という)に基づいて行われていた。

▼ Y社はXに社宅として利用させるために、2018年10月、T社を媒介業者として居室(以下「本件居室」という)を借り入れ、その後、Xとの間で、XとT社との契約関係が終了するまでを期限として、使用貸借契約(以下「本件使用貸借契約」という)を締結し、Xは本件居室での居住を開始した。

★ Y社が本件居室を借り入れるための敷金等の経費および月々の家賃については全てY社およびT社が負担することとされた。

▼ T社は2019年1月末頃、Xに対し、LINEを利用して、Xが同社の従業員に対して行った言動は許容範囲を超えていることから、弁護士と相談した結果、問題が解決するまではT社の施設、従業員の居宅および取引先等への立ち入りを拒否することなどを通知した(以下「本件通知」という)。

▼ T社は同年3月7日頃、Xに対し、業務委託契約は同年1月をもって終了しており、3月20日までに本件居室から退去するよう通知したが、Xは事実認識に相違があるとしてこれを拒否した。その後、Xは遅くとも同年12月27日までに本件居室から退去した。


<本件契約書案等について>

▼ T社は2018年11月、Xに対し、契約書案として、概要、以下の内容の「業務委託基本契約書」と題する書面(以下「本件契約書案」という)を送付した。その後、Xは労働債権の認定に係る文言を追加した書面を作成し、T社に対して交付したが、双方とも署名押印はしなかった。

・第1条(目的)
本契約は業務委託に関するT社とXとの基本契約とし、有効期間中、T社とXとの間においてその都度締結する個別契約に適用する。

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