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#336 「大分県商工会連合会事件」福岡高裁(再掲)

2013年5月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第336号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【大分県商工会連合会(以下、O会)事件・福岡高裁判決】(2011年9月27日)

▽ <主な争点>
退職金規程変更の合理性など

1.事件の概要は?

本件は、O会を平成21年3月31日に定年退職したXが(1)18年10月1日付で同会により改正された給与規程および退職金規程は不合理であり無効である、(2)仮に給与規程の改正が有効であるとしても、O会によるXの職階認定は人事権の逸脱・濫用であり無効であるなどと主張し、改正前の退職金規程および給与規程に基づく退職金算定額と実際の支給額との差である237万円余が未払いであるとして、同会に対し、上記未払金等の支払いを求めたもの。

原審(大分地裁)は、退職金規程、給与規程の改正は合理性を有し有効であり、人事権濫用等の事実も認められないとして、Xの請求を全部棄却したので、Xがこれを不服として控訴した。

2.前提事実および事件の経過は?

<O会およびX等について>

★ O会は、昭和36年10月に大分県下の商工会の健全な発展を図り、商工業振興に寄与するため設立された団体であり、大分県下の単位商工会をとりまとめている。

★ Xは、昭和44年10月から平成16年3月まで九重町商工会に勤務した後、同年4月にO会との間で雇用契約を締結し、21年3月31日に同会を退職した者である。

★ 16年4月以降、Xを含む大分県内の商工会の職員はO会と雇用契約を締結し、各単位商工会に出向することとなり、それ以降はO会の人事管理委員会の勧告に基づき、同会職員の給与、昇給が決定されていたが、その前後において、給与金額等に変更はなかった。

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<本件変更に至るまでの職員等との交渉の経緯、Xの退職金額等について>

▼ O会において17年7月から18年1月にかけて退職給与拠出金の充足率改善についての検討を行った。同月、人事管理委員会に議題として提案され、その後、O会の職員団体である大分県商工会職員協議会(以下「職員協議会」という)において、職員に対する説明会を行ったり、職員に対するアンケートの実施やプロジェクトチームにおける検討を行い、同年8月、職員協議会からO会に対し要望書が提出され、同年9月、同会からの回答がなされたが、「10年で充足率100%を目指す」という従前の方針を維持するものであった。

★ O会の職員協議会は労働組合とは異なるものであり、規約には労働条件の協議に関する記載はなされていない。また、同会には労働組合が存在せず、職員協議会の正副会長は人事管理委員会の委員であった。

▼ 18年9月の人事管理委員会において、上記正副会長らは退職金規程の変更に反対したが、賛成多数で可決された。

▼ 同年10月、O会により変更された退職金規程および給与規程が施行された(以下「本件変更」という)。

★ 本件変更に伴い、Xの変更前の基本給は18年9月までが28万6100円、21年3月までが28万9100円であったものが、本件変更後は18年度が26万2900円、19年度が26万4300円、20年度が26万6900円、21年度が26万9500円となった。

★ 本件変更前の退職金額の計算方法は、(職員退職時の最終基本給)×(勤続年数に見合う支給率)であり、Xの支給率は52.3であった。一方、本件変更後の退職金額の計算方法は、(職員退職時の最終基本給)×(退職理由別・勤続年数別支給率)+退職給与調整額であるところ、Xの退職時の最終基本給は26万9500円であり、支給率は44.4、退職給与調整額は78万円であるので、上記計算方法に基づくXの退職金額は1274万5800円である。

★ 本件変更当時、O会には重大な経営危機等により退職金を支払うことが不可能であったとの事情はなかった。

▼ 21年4月、O会はXに対し、退職金として上記1274万5800円を支払った。

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