#42 「テーダブルジェー事件」東京地裁
2004年6月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第42号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【テーダブルジェー(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2001年2月27日)
▽ <主な争点>
会長に対して声を出して挨拶しなかったことを理由とする解雇
1.事件の概要は?
本件は、親会社の会長に対する挨拶の仕方が悪いとしてT社を試用期間中に解雇されたXが同社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇による慰謝料ならびに弁護士費用を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<T社およびTF社について>
★ T社は武富士(以下、TF社)の100%出資の子会社として、平成12年4月に設立され、ベンチャーキャピタルを主な業務としていた。ベンチャーキャピタルとは、将来的に成長が期待できる会社を発掘し、投資することによって、その会社が上場等成長したときに利益を得ることを目的とする投資業務である。
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<Xの採用までの経緯、T社の就業規則の制定等について>
▼ Xは、D証券、米国のベンチャービジネス企業での勤務を経て、平成11年12月、N新聞に掲載されたTF社のベンチャーキャピタルの人員募集の求人広告を読み、TF社に応募した。
▼ 12年1月、XはTF社の会長でT社の代表取締役でもあるYの面接を受け、その際「ベンチャーキャピタル業務は、TF社ではなく子会社を設立して行う。現在子会社の社長を探しているのでしばらく待つよう」言われた。
▼ Xは同年3月、T社の社長に就任することが決まったZの面接を受けた結果、同社から採用通知を受け、同年4月、TF社本社ビル内にあるT社に初めて出社した。Xの業務はT社が出資するのに適当な有望企業を発見、調査することであった。
▼ T社は就業規則をTF社のものと同じ内容とすることとし、T社の総務部長Aは同年4月上旬、Xを含む社員全員に対して、TF社就業規則の写しを渡し、それをT社の就業規則とする旨を説明した。その際、社員から特に反対はなかったので、異議が出なかったものとして、就業規則を制定した。
★ T社の就業規則には「試用期間は3ヵ月(中途入社の管理職については6ヵ月)とする」、「試用期間中、不適当と認められた場合は社員として採用しない」旨の定めがあった。
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<Xの採用が取り消されるまでの経緯等について>
▼ 同月下旬、Y会長がT社を訪れた際に事務所内で仕事をしていたXを含む
4名の社員は起立して同会長に対し、頭を下げて挨拶したが、声を出さなかった。TF社では社員が来客に対して、声を出して挨拶することとされていたので、Y会長はXらの対応に大いに立腹した。
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