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#573 「みずほ銀行事件」東京地裁

2022年10月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第573号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【みずほ銀行(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2020年1月29日)

▽ <主な争点>
情報漏えいを理由とする懲戒解雇、退職金の全額不支給など

1.事件の概要は?

本件は、M社と期間の定めのない雇用契約(本件雇用契約)を締結したXが、対外秘である行内通達等を無断で多数持ち出し、出版社等に漏えいしたこと等を理由として懲戒解雇(本件懲戒解雇)され、同社の退職金規程に基づき退職金の支払を受けられなかったことに関し、M社に対し、本件懲戒解雇により精神的損害を被ったと主張して、不法行為に基づき、慰謝料5000万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、(1)主位的に、本件懲戒解雇は無効であると主張して、本件雇用契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、ならびに、本件懲戒解雇後であるバックペイとして賃金35万8300円の支払等を求め、(2)予備的に、仮に本件懲戒解雇が有効であるとしても、M社が指摘する退職金不支給事由はXの勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為ではなく、退職金を不支給とすることは許されないと主張して、本件雇用契約に基づき、退職金1223万4800円の支払等を求めたもの。

なお、本件においては、反訴として社宅の明渡しと当該明渡しまでの賃料相当損害金の支払等も請求されているが、この点は割愛する。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびXについて>

★ M社は、銀行業を営む会社である。

★ Xは、1987年4月、M社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した者である。なお、Xは2018年3月当時、A社に出向し、M社のシステム運用業務に従事していた。


<本件各違反行為、本件懲戒解雇に至った経緯等について>

★ M社が保有する情報資産はその重要度に応じて、最重要(MA)・重要(MB)・一般(MC)・公開に分類される。

▼ Xは2015年10月頃から2017年11月頃にかけて出版社等に情報漏えいする目的で、M社の情報セキュリティ規程に違反していることを認識しながら、重要(MB)または一般(MC)に分類される情報資産4件を同社外に持ち出した(以下「本件持ち出し行為」という)。

▼ Xは2014年5月頃から2017年11月頃にかけて出版社等に対し、情報セキュリティ規程に違反していることを認識しながら、重要(MB)または一般(MC)に分類される情報を少なくとも15件漏えいした(以下「本件漏えい行為」といい、本件持ち出し行為と併せ「本件各違反行為」という)。

▼ M社は以前より情報漏えいに基づくものと疑われる記事が雑誌に繰り返し掲載されていることを把握し、情報の元となる通達等を印刷した職員の調査を進めていたところ、新聞社が開設するブログの2017年11月17日付および12月12日付の記事に掲載されたメモおよび封書の筆跡がXの筆跡と酷似していたことから、Xが情報漏えいを行っているとの疑いを強めた。

▼ M社は2017年12月、Xに対する聞き取り調査を実施し、Xは本件各違反行為等を認める旨の顛末書を作成した。

▼ M社は2018年3月9日、Xが同社の対外秘である行内通達等を無断で持ち出し、これを出版社等に漏えいした結果、M社を誹謗中傷する記事が多数掲載され、同社の信用・名誉が大きく傷つけられたとして、Xを同日付で懲戒解雇し(以下「本件懲戒解雇」という)、退職金規程(以下「本件退職金規程」という)に基づき退職金を支給しなかった。


<M社における退職金の算出方法等について>

★ 本件退職金規程によると、退職金は職務等級や勤続期間等に応じて付与されたポイントを積み上げて算出する「基本退職金」、年間賞与額に応じて付与されたポイントを積み上げて算出する「業績退職金」および「特別退職金」で構成される。

★ 具体的な支給方法としては、基本退職金の6割の金額を退職年金(以下「本件退職年金」という)として支給し、基本退職金の残り4割の金額に業績退職金および特別退職金を加えた金額を退職一時金(以下「本件退職一時金」といい、本件退職年金と併せ「本件退職金」という)および確定拠出年金として支給する。

3.元社員Xの主な言い分は?

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