せみ
昨日と今日。
せみの子が家の壁に登って来て
孵りました。
ここという所を見つけて孵るのか
その高さで力尽き殻を破り出したのか
それとも時が満ちたのか。
私には到底考えが及ばない理由で
自然と身体が反応するのでしょう。
高い所に登って孵るのは
天敵から身を守る必要があるとか
いろんな理由があるのでしょうが、
孵るせみの姿を見ていると
全くの無防備。
逃げる事も何かしら攻撃する事も
できません。
ただひたすら飛べるようになるまで
待っているだけです。
身体すらまだ白く
触ったら多分フニャっとする感じです。
羽根もまだ柔らかく羽ばたきすら
できません。
ただ、目だけが純粋な
透き通るような黒い色をしていました。
運を天に任せたような
この世の全てを受け入れているような
澄んだ目をしているのです。
あと数時間すれば
暗闇とはいえ、まだ見ぬ広大な世界へ
羽ばたいて行くのですけど。
今まで地中の中で窮屈な生活をしていたのに
空を羽ばたくというのは
どんな感じなんでしょう。
今、東京では
都知事の選挙戦が繰り広げられています。
東京でもせみは孵って
明日、明後日鳴き続けるでしょう。
せみは1週間
死力も尽くして鳴き続けます。
まるで候補者のように。