2022年ボカロ10選
2023年1月最後の日。去年の10選、ここを逃すとまた書くのが遅れちゃうんじゃないかと。ま、去年だってね、6月になってようやく取り掛かったんですから。それに比べたら長足の進歩と言えます。
ボカロの全曲チェッカーには頭が下がりますが、こちとら出会う機会がある曲しか聴いてません。2022年度にニコニコ動画で投稿されたVOCALOIDオリジナル曲は検索してみると4.4万曲以上で、2021年の1.5倍ぐらいになってるんですが……? あばばばば。全部は無理です。無理。
というわけで、聴いてきた曲の中から10選を選びますよ。もちろん、最大公約数的な名作にはなりません。もしそういうのが聴きたければ、去年のオリジナル曲を再生数順に並べて頭から聞いていけば良い。それも悪くはないですが、私は好きにやらせてもらいます。
では、始めましょう。
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1.ONESELF / Twinfield feat. 初音ミク
2022/1/31 Twinfieldさん
トップバッターは、ミクノポップシーンで活躍するTwinfieldさんから!
スマートフォンゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』第8回楽曲コンテストプロセカNEXT、テーマ「EDM」にて採用された名曲です。聴くだけで首が前後左右に揺れてしまうぜ……! 静かに始まってどこまでも疾走していくストレートコース。ワブルを交えた間奏部の技巧に、急に速さを落として明媚な光景を見せてくれる。VOCALOEDMの美味しいところ全部盛りなんですよ、これは好きにならざるを得ない!
「幽世サワーズアラモード / Twinfield feat. 巡音ルカ」とだいぶ迷いましたが、直球で響いてきたこちらを入れました。2022年、Twinfieldさんめちゃ頑張ってたなあ……ミクノポップ好きは全曲視聴してるよな!!
(参考)
幽世サワーズアラモード / Twinfield feat. 巡音ルカ
2022/8/11 Twinfieldさん
2.私じゃなくてよかった / 初音ミク
2022/11/20 ふなばらさん
2021年「シアトリカライフ」がぶっ刺さった私にとって、ふなばらさんは押さえるのがマストです。フィクションの持つ記号的所作を、こんなにも自在闊達に表現してくれる方は貴重……
ニコ動の投稿者コメントにあるように、初音ミクV4Xが再インストールできなくなったふなばらさんが初音ミクNTを購入して思ったこと。
ボカロユーザーにとって「我が家の初音ミク」とは……自らの来歴において占めてきた初音ミクのポジション次第で、大いに揺れ動く概念です。何かしらが違っていれば、今の初音ミクのポジションを他の何かが占めていれば、それが「初音ミクでなくても良かった」可能性があるわけで。そんな可能世界を心の片隅に置きながら、今の初音ミクと向き合っている歌なのです。
3.誰のための足か/flower
2022/12/16 Δさん
Δ(でるた)さんは、2022年には「メテオライトレッド/Fukase(+flower) MV」「誰のための足か/flower」の2作品を投稿。より深く刺さった後者の方を採用しました。
お洒落なピアノの緩急で、ぐいっと喉元を掴まれる。MVの歌詞が音楽と調和して止まらない。ずっと己の夜を見つめ続けたΔさんだから、拠り所として選ぶべき立場を吟味する曲が書けると。ぬるく冷えた浴槽に浸かる人魚は、Δさん、そして私たちの自画像なのです。システムを作った連中に、真綿のように首を絞められていく私たちの。
(参考)
メテオライトレッド/Fukase(+flower) MV (meteorite (d)re(a)d)
2022/8/20 Δさん
4.グレートフィルター / 伊根 feat. 星界
2022/4/23 伊根さん
伊根さんの星界ちゃんも良い声出しますね。そういえば10選に可不曲を入れてないことに気付いた。名曲はいっぱいあったので、たまたまですけど。
文明が発展しすぎると自己破滅をもたらす可能性も高い。他の宇宙文明と交流する前に滅ぶ文明も数多いのではないか。どこにも宇宙人が見当たらない理由を説明するための仮説、それがグレートフィルターです。
遠未来、虚空に進出する合成音声AIたちは、果たしてその先に交流する相手を見つけられなくても歌い続けるのでしょうか。
5.コトダマ (feat. 重音テト) / kamome sano
2022/10/10 沙野カモメさん
沙野カモメさんの「テトの日2022」作品。テト誕はエイプリルフールの4月1日ですが、10(テ)月10(ト)日も重音テトファンにとっては重要です。
最初は絵空事から始まったテトでも、光を集めて少しながらこの世界を変えていった。UTAU界隈を引っ張ってきた重音テトの見事なイメージソング。合成音声曲としてVY1V3と重音テトを用いてきた、沙野カモメさんだからこそ書けるメロディと歌詞ですね。「未知」を「道」に変える演出や、最後に「(non)fiction」と銘打ってくれるMVにも、ふふっとなります。
6.Magic / 志茉理寿 feat.GUMI
2022/11/26 志茉理寿さん
志茉理寿さんのGUMIちゃんは絶品。何かドラマのエンディングでも違和感ありません。YouTubeを中心に活動するようになったボカロPさんなので、ニコ動だけ聴いていると、こうした名作を聴き落とす可能性があるってこと。ボカコレ視聴をほぼぶっちしている私が言える話ではありませんが……
2022年作品では「剣の下に立っている」「真夏のユークロニア」はニコ動でも聴けますが、「トワイライトカラー」「アルビレオ」そして「Magic」はYouTubeだけの投稿です。自分の好きな作者さんを見つけたら、プラットフォームがどこでも、ちゃんと追いたいものですね。
7.BeatSea「チェックメイト - feat.初音ミク」
2022/11/2 BeatSeaさん
「恋は戦争」などと言っても、実際に最前線に立ったらメロメロになっちゃう。そんな想いを、BeatSeaさんが甘く瑞々しく紡いだ曲です。
2番のAメロで「点と点を結んで」のとこ、ぐにゃぁと音が歪むのが好き。全体にゆったりなのに緊張感が保たれるのは、こうした捻りがいつ来るかと身構えさせる工夫があるから。ラストの「その胸の奥に射させてよ」(=「居させてよ」)がまた良いじゃないですか……
8.gaburyu - ミューム、やっと会えたね。(w/初音ミク)
2022/9/2 gaburyuさん
ゆったり曲が続きます。こちらは2次元と3次元が画面越しに邂逅する愛の詩。夢のように揺蕩うfuture bass。囀るミクさんの美声もまたエモい。画面から半身を乗り出してくるのがミュームなのでしょう。ミームに掛けているのかな。元ネタはよくわかんないや。
たとえ怪物になり果てても会いたい気持ちを、画面の中の”彼女”が持ったとしたら……? あなたには受け入れる度量がありますか?
9.【オリジナル】海の月 / 初音ミク mtrika【VOCALOID】
2022/11/11 mtrikaさん
mtrikaさんの3作目。ピアノの音に惹かれて10選入りを決めました。2022年では最高に好きなピアノミクです。
個人的には、人との生活に疲れて孤独を選び、憂いを海に溶かそうとする歌と受け取りました。
なんて、まさにそのものでしょう。
「昨日も今日の」「存在の隙間」など、ここら辺の言葉遊びも好き。
とは歌っていても、海へ消えるのが無理なことも分かっていて。
海月(くらげ)の浮き沈みに心地を仮託しながら、海や月に向き合って癒されていく風景が、とても美しく感じられました。
一言でいうと、好き。
10.八王子P × kz(livetune) 「Glimmer feat. 初音ミク」
2022/8/30 八王子Pさん&kzさん
文句なしに優勝!
八王子Pさんとkz(livetune)さんの合作、2022年ミク誕曲。初音ミク15周年に集ったレジェンド。真正面から希望を歌う光の眩しさたるや。
完成度がエグすぎて、まともな感想が書けないんですよね……語彙力が足りない。完敗です。歌天使・初音ミク、15年の歴史を勝手に受け取って浄化されてしまった心は、もう元には戻らない……
あれこれ言っても15年以上追ってますから。ミクさんには敵わないなあと思いつつ、なんとか初音ミク概念を判読していく一研究者としてこれからも過ごしていきたい所存……何言ってんだ、こいつ。
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最後は感想なのか分からなくなりましたが、いかがでしたでしょうか。
2022年10選に入れられず、ぐぬりながら外した作品も数多いので紹介していけたらいいな。
では、今回はこの辺で。
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