「なぜ今の会社を辞めないの?」 私の場合の答えが見つかった。
よく聞かれること。
「そんなに残業したり四六時中仕事ばっかりなのに、(しかもその割に評価されてないのに←うるさいわ) どうして転職しないの?」
社内外問わず、話をしているといつも不思議がられる。
自分でも不思議だし、ずっと「24時間働きます」みたいな状態が続くことに体力よりも心がしんどくなることも定期的にあって、今年の春先には転職エージェントに面談まで申し込んだ。
「年収もポジションも確実にあがるし、求める企業も多いと思いますよ。上場企業のマーケティング部門のリーダーポジションもいけるかも。」
私より多分少し若いエージェントの女性があっさりと言った。(もちろん、エージェントだから色を付けて言うのも理解してますよ。)
それでも私はいまも同じ会社にいる。
決してクリエイティブな人間ではないけれどクリエイティブな部門に属し、中途半端な能力をいくつかだましだまし使いながら、専門性は?と問われたら言葉に詰まってしまうような劣等感を感じながら、もう数年も今の仕事をしている。
臆病なのだと思っていた。環境を変えることに。新しい仕事がこなせる自信がないのだと。
もちろんそれもゼロじゃない。20代の頃の無鉄砲さや無根拠に未来を描く無邪気さは確実に減っている。
でも、それだけじゃない何かが自分を留めているとも、おぼろげに感じていた。ただしそれは、「慣れ」や長く在籍していることによる「ゆるさ」や「惰性」なのではと思っていた。
そんな中、この本を読んだんです。
論理的思考をベースにした、従来のビジネスをより効率的に進める方法ではなく、デザイン思考を基軸に創造的に問題解決をしていくことを説いた本。
この本に、私の今の仕事の取り組み方が全て書いてありました。これ、教科書だ。
うちのボスは感覚的にしか言わないけれど、そうか、うちのチームでやろうとしているのはデザイン思考によって世の中に新しい事業を作っていくことなんだ。かつ、実際に事業を長年やってきた経験から、その「デザイン思考」によって生み出されたものを「実業」として成立させていく。そこまでの全部をやろうとしてるのだ、と。(やれてるかどうかはひとまず置いといて)
ボスの仕事の進め方や考え方、言葉はごもっともなんだけど、堅い中小企業で新卒教育を受けた特段才能もない頭でっかち気味の私には、どうしても「感覚的だなぁ」と思ってしまうことが多々あった。仕事の進め方をロジカルに理解したかったし、プロジェクトの向かっている先が最後までクリアに分からなくて、路頭に迷ったような気がしてクライアントをだましながら仕事をしているような罪悪感も感じていた。
けれど、それがビジネス思考でプロジェクトを進めているからだということがこの本には明らかに書いてあったし、なによりもなぜ自分が疑問を感じながらもいまのチームに所属し続けるのかの答えが、最後の章に書いてあって、光が射した気持ちになった。(「右脳モードへの道しるべ」という最後の章です)
私の性質上、ほっておくと思考も行動も左脳優位に支配されがちなんだけれど、右脳の情緒性がないと生きていけない。マーケティングは好きだしのめり込むこともあるけれど、しばらくするとロジカルの反動が押し寄せてきて、全てに意味を感じなくなってドロップアウトしてしまいたくなる。(ただし心を病むことができないのが私の強いところでもあり、残念なところでもある)
右脳で感じることばや音楽や景色や、未知の世界や価値観に出会った時の感覚がたまらなく好きで、仕事でもその「好き」をどこかに感じていたいし、その「好き」という、直感だけれど自分では紛れもなく信じているその感覚を世の中に増やしていく側の人間になりたいと思っている。それを仕事にしたいと思っている。
だからバキバキのマーケティングやロジカルに固められたビジネスサイドには私は行けない。かといって、アートやデザイナー側には行けない凡庸な自分も知っている。そのどっちかつかずの自分のバランスを取りながら、社会とつながっていていいと思えるのが、今のところは今の会社しか見つかっていない。だから今の会社を辞めることは選択肢に上がらないんだと気づいた。
その次のフェーズとして、じゃあ自分のデザイン思考を高めましょうという課題も見つかったので、この本は本当に自分を切り拓いてくれた気がする。
ちなみに、amazonのリードはこう締めくくられてます。
デザイナーではない普通のビジネスパーソンがデザイン思考を実践するためのヒントが詰まった一冊。
さらっと書いてあるけど、本当にその通りで。佐宗さんのほかの著書にも頷きっぱなし。
年末は佐宗さんが書かれた新刊を読もうと思う、2019年の年の瀬です。
長文を読んでくださったあなたも、どうぞ良いお年を。