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思い出せばそれはある
たとえば子どもの頃の空気とか、もっと後の10数年前くらいの空気とか、思い出そうとすれば、思い出せるものです。
明らかに今とは違ってる。今は、違ってしまってる。
空気はもっと、濃かった。ピンとした力があった。もっと透明だった。
いろんな匂いや香りがあった。人や生きものたち、植物たち、土の心を感じた。
しかし、小説は指輪を通して、人間が物を秘蔵したがる行為や偶像化、そして疎外感を感じていく我々の怪物的な傾向を徹底的に批判しているのは間違いありません。
「指輪物語を巡る16の哲学」の続き。久しぶりです🙂💍
‘ 近代の市場経済では製造者と消費者の関係が失われ、自分自身の労働の成果からさえも遠ざけられてしまう
人と人との関係も物と物の関係のようになりこういう商品は盲目的に崇拝する人物たちにとって執着の対象となっていく ’ 資本論
引用の引用。
いつの間にか世の中の空気は変わっていっていた。
最初からずっとこうだったように、なんとなくみんな思うようになっている。
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過去に目を向け、どうしたら現代の世の中に役立つ発見ができるか模索したのです。
多くの人たちが賞賛し、崇拝さえする混沌とした世界観に対抗して、トールキンは伝統の大切さと価値を重ねて主張したのです。
危機的な時代において過去の叡智をかえりみないと、今ある世界を破壊するという選択肢しかなくなるという点。
さらに、
‘際限なく新しいものを生み出せるという永続感をモダニズムがもたらしている。
未知の物を創り出せるという、わくわくするような希望を与えてくれる反面、何ひとつ永続せず、絶対的な善などありえない、それを見せつける世界。
モダニズムは人を欺き、あらゆる期待を抱かせて魅力的ではあるが、期待を裏切りもする。
現代の世界では、とれほど成功を収めても、最終的には成功は失望の始まりであり、絶望の序曲となり得る。’
マーシャル・バーマンのモダニズム
と引用続きます。
それに気づいたトールキンは、反モダニズムのファンタジーとして、中つ国の物語を世に送り出しました。
バーマンとは違って、人が制御できない力に頼るのではなく、善が優位に立つような変化を生じさせる方法を彼は考えました。
この観点からすると、指輪そのものが一種のモダニズムです。
登場人物の中でいちばんはっきりと絶望を味わうのは、指輪の力から逃れられないと考える人たちです。
逃れられない。
コワいですね。
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自分で思ってるよりずっと、人は、逃れられなくなってるものです。
自分でわからないから、逃れようもありません。
ふっ 💫
と、思い出す瞬間。
ほんの一瞬。
きっかけ。本だったり、音楽だったり。
食べものでも、何かの匂いでも。
誰かと話してて突然。
通りすがりの人のほんの一言。
それから少し考えてみる。
思い出そうとしてみる。たぐり寄せてみる。
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そうだった。
ほんとうの空気があったはず。
ほんとはここにもちゃんと、しっかりと、あるはずなんだ。
あるんだ。
みんなが忘れたから
見えなくなってただけ。
みんながあると思い出せば
それは、たしかに、今も、あるんだ🌏
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