孤独な先導者
私たちの視界を遮るように建てられた巨大な壁の中で、10数羽の鳥達が芝生から1本の木に一斉に飛び移った。
群れに近づいた二足歩行の動物を警戒したのだろう。
木に先着した鳥の姿を目で捉えることはできなかったが、最初に芝から飛び立った鳥が先導者となり、他の鳥を安全な木に誘導したのだと思った。
人間にも群集心理があり、誰かが提案した方針、意見に賛同し、安全な場所を目指す。
それが間違っていようが、自分独りではないことに安心感を抱く。
人間は言葉を用いて意思疎通を図るが、鳥達も同じなのかと疑問に思った。
調べてみると鳥達には、
「数の多い方に近付こうとする」
「飛ぶ速さを合わせようとする」
「近付き過ぎると離れる」
という習性があるだけで、先導者と呼ばれるようなリーダー的存在はおらず、それぞれが個として動いているらしい。
しかし、この法則は最初に行動した鳥がいるからこそ達成できるもので、木を目指して行動した鳥と、木を目指した鳥を見て行動した鳥がいるはずだ。
同僚が肩を並べて仕事をしている中、私は意味のないことを真剣に考える。
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