映画『吠える犬は噛まない』 ポン・ジュノの手腕炸裂
ポン・ジュノ監督はプログラマーやエンジニアになっていたといしても優秀だっただろう。そのくらい緻密で見事な構造を持った作品を作り上げる。
幾重にも重なったストーリーの絡み、いくつもの役割を担う小道具、大胆な色使い、それでいて社会風刺をしっかりと織り込む。それも飄々とユーモアを持って。何でもないシーンをほんと個性的に、巧妙に撮るなと。
まあ軽犯罪やグレーゾーンのオンパレードなのだが、そこは人間。やましいところがあれば、他人の悪事にも見て見ぬ振り。心を痛めながらも時に利用する。で、これは映画的には面白い題材なんですね。
飼ってはいけない犬が、マンションで何匹も失踪し、その捜索を巡って色んな人間ドラマが交差するんだけど、その交差の仕方がいちいち見事。ポン・ジュノはこれやらしたら天下一品だなと。ぺ・ドゥナは本作をきっかけにブレイク。見るからに冴えない、マンション管理室の経理の女を演じる。主任から「商業高校出た子なんかそこら中を歩いてる。代えはいくらでも効くぞ」と言われるも、素朴な勇気と親切心で歩む。ギョロギョロと目を動かしながら、コミカルに。
ちなみにポン・ジュノはその後、『殺人の追憶』や『母なる証明』という名作を撮るわけだけど、そういうなんだろ、真相探し、未必の故意(?)的な作品に向いてるんでしょうね。 にしても『母なる証明』は良かったなあ。もう三回は観てるけど、また観てレビュー書きます。
氏の学生時代のアーリーワークスも観たことがあるけど、机の上のエロ本がバレそうになった大学教授の手に汗握る奮闘劇とか撮ってました。(笑)
ただ、『グエムル』あたりから個人的には作風が合って無いんじゃ無いかと思い、『スノーピアサー』でちょっとがっかり。『オクジャ』は開始15分で観るのやめましたね。韓国映画として撮るからこそ魅力があるみたいなところありますね。
※ポン・ジュノの作家性について、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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