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人はなぜオシャレをするのか?アパレルで僕らがチャレンジしたいこと。
こんにちは、月額メンズファッションサブスクサービス「leeap」(リープ)を運営している井上大輔です。
「leeap」は、洋服に自信がない人の洋服の悩みがなくして、ひとりひとりが毎日のコーデを楽しむことができる、サブスクリプション型で洋服が届くサービスです。そんな洋服製造の上流からエンドユーザーへお届けする下流まで、全ての運用を経験することでアパレルの難しさと面白さと奥深さを感じている日々を過ごしています。ああ、難しい。
そんな新参者の僕が、アパレルが解決するべき課題について話をします。
アパレルの現状と潮流
唐突ですが、みなさんがいま着ている洋服(着ていますよね?)のアパレルがどういう状況になっているか知っていますか?
参照:矢野経済研究所
アパレルはオフラインの店舗を中心に(特に商業施設)成長してきた小売業で、年間売上は市場規模で9兆円(オンラインは8%程度で伸長傾向)あります。
これからまだまだオンラインは伸びると予想されていますが、近年は横ばいが続いています。
アパレルでの近年のトレンドは顧客とアパレルを直接結ぶ「D2C」という業態と、オンラインとオフライン(店舗)がシームレスにつながる「O2O」が2大潮流です。
D2Cは、顧客の要望が細分化され、マス=マイノリティというマスって誰なんだろう?状態です。尖ったアパレルの尖った情報を欲しがる人に、スマホでモノづくりのストーリーを伝え、ストーリーを理解し共感した上で洋服を買ってもらうという流れが加速しています。
そしてO2Oは、まだ目新しい何かはあまりないというのが僕の印象です。
すなわち、業界自体に伸びや勢いはないが、スマホとインターネットというツールを通じて、オフラインでできたことをオンラインでもできるようにする移行フェーズにある業態といえます。
アパレルの成長ドライバー
アパレルメーカーは、デザイナーが考える世界観を体現した洋服を、感度の高いバイヤーにプレゼンテーションをし、バイヤーの判定により年間の発注が決まり、それをもとに翌年の生産スケジュールが確定します。
そしてアパレル各社は自社の仕入れアイテムをもとに、メディアを作り、トレンドを作って大量のアイテムを大量の店舗を通じてユーザーに販売するモデルでした。僕からすると、ユーザーよりもデザイナーとバイヤーが中心となった需供体制のように見えます。
その体制に、毎シーズン多くの可処分所得を投下するユーザーのアパレルへのニーズは、「オシャレになりたい」「こう見せたい・見られたい」というシンプルな動機がベースです。その動機のための幻想作りは、今までメディアが担ってきました。
「こういう洋服がトレンド」「こういう生活なら、こんな服とライフスタイルが一緒」など分離不能なモノとして、パッケージ提供される。そして多くの人がその幻想にお金を投下してきました。
コロナのアパレルへの影響
デザイナーが作る洋服を大量の店舗とセールで成長してきた大手アパレルは、コロナによってこれまでの店舗を使った大量生産・大量販売が通用しなくなるという可能性の高まりを示唆しています。
またそれより前に、アパレルのビジネスサイクルは環境的問題があるのではないか?と言われ「サスティナブル」というワードで「大量生産反対」と「リサイクル促進」という文脈で問題視されていました。
毎年大量の洋服を生産し、大量の店舗をこしらえて消費を促すのは、地球規模としてNGではないかという考えです。メディアから個人にアパレルの情報の発信がエンパワーされた今、企業のスタンスによって自社の売上は左右します。
洋服を消費として捉えるのか?資源として捉えるのか?の答えを企業は必要になっていて、アパレルをサスティナブルで考えようとする企業をいくつかの力をもった個人は支持します。
環境的に問題があり洋服の大量生産も、大量の店舗販売もできない。コロナによりこの課題が「未来の課題」ではなく「喫緊な課題」としてアパレルに立ちはだかりました。
幻想をつくり続けられるもの
ここで一度ユーザー側の話に立ち返らせてください。
そもそも人が洋服を買う目的とはなんでしょうか?
まず日常の洋服を安く楽しみたい目的があります。その人たちは「オシャレってなんだ?」「こんな高い服を買わないといけないもの?」という疑問を持っていたのですが、そのアンサーをファストファッションが「あなたが欲しているのはこれでしたか?」と洋服を具現化し提示しました。
アパレルの定向進化は、「早く」「安い」「オシャレ」という武器でファストファッションの提供が強い企業は、洋服の製造サイクルをいろいろな施策で早く回し、手軽に洋服を楽しみたい人のニーズを刈り取ることに成功します。
もうひとつ、オシャレとは自分はほかの人とは違う自己表現の目的があります。
「ほしいものがほしいわ。」と言ったのは糸井重里さんですが「着たいものが着たいわ。」と思っているのがアパレルユーザーです。
本来アパレルはユーザーのニーズに、洋服とライフスタイルをパッケージして幻想を提案してきましたが、そのニーズにD2Cブランドはオリジナルのモノづくりのストーリーで勝負します。O2Oの施策の多くはアパレル都合が多い気がしますが、D2C専業はアパレルが本来やりたかったことのネット版です。
昔からある常に顧客とコミュニケーションを取り、生産者と顧客をつなぐ(ここではサプライのみも含めます)モノづくりのスタイルが、今になってオンライン経由でつながることになりました。
またアパレルが幻想をつくる上で苦戦したのは、アパレル各社の自社ECへの取り組みの遅れです。多くのアパレルメーカーは大手プラットフォームを販路として使いました。商慣習的に館(やかた)に集客を任せていた名残りで、自社でトラフィックを稼ぐというベクトルに向かわなかったのも一因だったのかもしれません。
ただECの場合、プラットフォームに販路を握られてしまうと、アパレル独自の世界観をデジタル上で再現し構築する難度が高いことも同義です。
幻想を作って売るというのをアパレルは得意としてきてましたが、プラットフォームでは類似アイテムや競合ブランドと常にアイテムが比較され、プラットフォームで幻想を売るのは至難です。
顧客の課題はどこ?
人が洋服を買う目的の話に戻します。
「安く洋服を楽しむ」「自己実現」のために洋服を買う人以外に、「楽にオシャレをしたい派」「オシャレで失敗したくない派」のどちらかの目的の人も多いのではないでしょうか?
「楽にオシャレしたい派」であれば、洋服を買うために超えるハードルがたくさんあります。「ファッションの基本を覚える」「トレンドを抑える」「自分に似合う服を探す」が必要です。オシャレするのはとても大変です。その場合まだオシャレをしたいという動機があるので、そうした課題は「苦役・苦行」ではないのかもしれません。
ただ「オシャレで失敗したくないオシャレに興味がない人」はどうでしょう?
今はコロナによって、スマホの中にある大量の洋服からあなたの洋服を選びましょう。という世界が起こりつつあります。
これはオシャレに興味がない人から言えば、不可能と難しすぎるの間ぐらいに位置する活動です。それはワインをあまり飲んだことがない人に「匂いだけで美味しいワイン」を選んでみてください。ということに等しい苦行です。非常に面倒くさい。その割に決して洋服は安いものでもありません。
そこには「失敗してはいけない」「TPOを外してはいけない」というプレッシャーがあります。ここに僕たちが解決すべき課題、そしてアパレル企業とともに解決すべき課題があると考えています。
まとめ
アパレルは過去のビジネスモデルを検証し、再構築するタイミングに来ているのかもしれません。その構築の鍵はユーザーのオシャレをしたい動機や課題に向き合う企業のように思います。
ユーザーは何を求めているのか?何に困っているのか?を課題と体験からアパレルビジネスを再度考えることが必要です。
今のアパレルの定方向に進化するようなチャレンジも必要だし、僕たちのようなユーザー課題にアプローチをする企業も必要で、それらの相互補完的な活動によって、ユーザー視点でもっとアパレルの体験は良いものになると思っています。
昔アパレルが力をもっていた時代の形とは違う、別の形でひとりひとりの生活をもっとアップグレードするようなアパレルにしたいです。今回はアパレルを俯瞰した話で書けませんでしたが、そういう課題に僕たちがどうチャレンジするかの話をさせてください。
アパレル新参者の井上でした。