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祖母。

母方の祖母。
つまり李氏と結婚した人。

私が小さい頃。
祖母の名前は山田**と三崎**という、2種類あった。

叔父の苗字が山田だったので
山田はわかるが、三崎とは…?

特に保険証などが三崎だった。

なんで名前が二つあるのか、思ったけど
父方の祖母も苗字が違っていた。
これは再婚したからだと聞いていたので、
その母方の祖母もそんな感じなのかな、ぐらいで深く考えたことはなかった。

後に取り寄せた祖父の戸籍から
祖父と祖母は次男が生まれる前に入籍して、次男が生まれた後に離婚したことになっていることがわかる。

これは何から事情があったのだろうけど、そこは今となっては誰にもわからない。
祖父は創氏改名で「山田」を名乗っていた。
結婚していた時は山田**だったのだ。

祖母は三崎家の次女で、三崎家は大きな庄屋か何か…お金持ちの家だったらしい。

後々、財産分与で母や叔父たちまで財産放棄の手続きを求められたことがあると言っていたので、かなりの資産があったのだろう。

祖母は今でいうなら不良娘だった。
親のいう通りに結婚していった姉とは違い、自由奔放な娘だった。

祖母には、韓国の祖父と結婚する前に産んだ娘がいる。
母たちも私たちも祖母は再婚して李氏と結婚したと思っていた。

だが戸籍に、1回目の結婚も出産の事実もない。
不良娘が不良男子と付き合って妊娠した。子供は生まれたものの、相手は働きもせず別れることになった。
産まれた子供は母(祖母)の両親の戸籍に入れられた。

戸籍上、親子関係はないが祖母が最初に産んだその娘は
祖母が李氏と結婚した時、連れ子として一緒に暮らしていたらしい。
祖父は連れ子のその娘をとても可愛がっていた、と聞いた。

そんな、なかなかハードな過去がある祖母。
気性は荒い(笑)
というか、そんな生き方の人だけあって、強い。

祖父が商売で成功し、お金を稼ぐようになると、毎晩のように飲み歩いた。「宵越しの金は持たない」タイプの人で豪快に遊んだようだ。

祖母は祖父が酔っ払って帰ってくると財布からお金を抜き取り
それらをヘソクリしては子供たちに使っていたらしい。

金は稼ぐが、使う。
そんな祖父だった。

お金もあり、イケメンとなれば
もちろん女性もほっておかない。

祖父が病で倒れ、そのまま亡くなってしまったとき
お通夜に男の子の手を引いた女性が訪ねてきた。

どうやら、どこかで囲われていた愛人とその子供だった。

「毎月の送金が滞っていて、心配で来ました」

その女性がそういうと、祖母は
葬式が終わると家も取られて、間借り人となるほど困っていたのに、
家の中のお金をかき集めて、その女性に持たせたという。

かっこいい!

そんな祖母だからこそ、祖父と一緒になれたのかもしれない。

祖母は結局、最後まで山田**として生きた。
つまり、李氏の妻を全うした。
再婚することもなく、一生亡くなった祖父を思って生きたのだと思う(思いたい)

叔母がまだ水商売をしていた頃の話。

ある会社の人が時々グループで来ていた。
その中の1人が、とても気になった。
どこかで会ったことがあるような、妙な親近感を感じていた。 
まわりの人たちが
「2人はなんだか似ているね」と笑っていた。

「あなたは韓国人ですか?」と聞かれた叔母は、すぐに否定した。

「そうですか…実は…」

その男性が話し出した。

自分の父親は韓国人だったらしい。
しかし、母とは結婚していなかったようだ。
その父の葬儀に行った記憶があり、その時にそこの奥さんが大金を持たせてくれて、「申し訳ないがこれだけしか渡せない。今後は助けてあげられない」と言ったらしい。
それからはお母さんと地方で暮らしたけど、あの時に持たせてもらったお金のおかげで生活できた。とても感謝している。

実はママさん(叔母)になんか親近感を感じてしまって、韓国人かと聞いてしまいました。申し訳ない。

この話を聞いた叔母は、直感でこの人は父親の子だ、と思ったらしい。
だけど他のお客さんもいる手前、深く話を聞けなかった。

次に来たら聞いてみよう、と思っていたら、転勤してしまい2度と来ることがなかったらしい。

この話を聞いていたので、もしかしたら祖父の戸籍に知らない人の名前があるかもしれないと思っていた。

戸籍には祖母との間の子供しかなかった。これは祖父の祖母への思いの証かもしれない。

離婚していたのに、私の母の名前が戸籍にはある。

祖父が自分の戸籍へ入籍してくれたからこそ、私と祖父の繋がりが残った。

もし、祖母が日本の自分の戸籍に入籍していたら祖父との繋がりは残らず、ルーツを探すことはできなかった。

祖母が生きているうちに、事実を知ることができていたら
祖母からいろいろ話を聞くことができたのに、と思うと残念で仕方ない。

祖父の思い出話がほとんどない中で、ただ「すごい男前だった」ことだけはいつも聞かされていた。

きっと祖母は祖父のことを、とても愛していたんだろうと思う。

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