餃子に愛

ひびの追悼

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ひびの追悼

最近の記事

季節

春。 耳に踊る花弁。 神社の階段から振り返る君の笑顔が愛しい。 枝垂れ桜がわたしを追いかけて、わたしはその先のこびとの背中追いかけて、いつの間にかどちらも見失っていた。 夏。 あの氷菓がふたりの約束だった。真夜中に光る音色は、君のちいさな部屋をおおきな月に変えた。彩度が低くなった景色に黒がゆっくり近づき、気がつけば夢を見ていた。小鳥が鳴いて、気がつくとそこにもう君は居ない。わたしは未だ、夢を見ている。 秋。 藤の花が金木犀に変わる。寄りかかって運ばれることのやわらかさを知

    • たったひとつの恋をした。 わたしが自分自身の意思で誰かに恋をしたのはそれがはじめてだった。 それまでの人生がいかに灰色だったかをありありと見せつけられるように、君と出逢った日から世界が目まぐるしく彩られてゆく。 君の思考した結果による行動が好きだ。 自ら本を選び、そこから幾つもの知識を得、考察を重ねて解に辿りつこうとする。 そうした学びを、君は惜しまない。 わたしは人生ではじめて、わたしの方から誰かに手を伸ばしたのだ。

      • 黄色とピンク色を混ぜると、オレンジ色ができるとしったとき。

        それは私が大人に近づいたとき。 小学一年生。 図工の時間に校庭にある遊具の絵を描くことになった。私は黄色とピンク色をパレットに出して、それぞれを単色で塗ろうとしていた。 しかし筆に水をつけて絵の具に触れようとしたとき、その2色は混ざり合った。 私は其れを大発見だと思った。クラスでこの秘密を知っているのは、自分だけなのではないかと言う高揚感に包まれた。 きっと、誰かは知っていた。 けれどそれで良かった。私は私自身で、その事実を掴み取ったことこそが大事だったのだ。 あれは

        • 君の部屋の埃になりたい 君の本の栞になりたい

          君の文学

          其れがこの世の何より憎かった。ずっと消えない呪いとして私の中に在り続けた。君の好きなあの娘と、君の好きな愚筆家の彼を私は一生愛することはできないのだろう。 思えば好き勝手して来なかった人生だった。 結局其れが好き勝手している現在に繋がっていたとしても、あの頃の少女はそうだったから。 君に言われた、「きっときみは誰でも良いのだろうね。」という言葉を少女は喚き散らして受け入れようとしなかったけれど、今は大きく頷いてしまう。 ただ、誰でもいいという訳ではなくて、君じゃなくて良いだ

          私は君を通して、君じゃない誰かに心火を燃やしていたのだ

          私は君を通して、君じゃない誰かに心火を燃やしていたのだ

          交差点で君を見つけることすら出来ない(2)

          私の愛した君たちはと言うと、私の住む街にはもう居ない。最初から居なかったひともいるし、居なくなってしまったひともいる。 だから街中ですれ違うことも、思い出の公園の前を通り過ぎるなんてことも、信号待ちが同じタイミングになることも 絶対に有り得ないのだ。山崎まさよしの「One more time,One more chance」を聴いても全く共感することが出来ない自分の境遇を呪いがちになる。 諸行無常なこの世を、少女だった頃の私は少し淋しく思っていた。変わりゆく君たちを、街並み

          交差点で君を見つけることすら出来ない(2)

          黄色信号で停ること

          助手席で凍える私に「おいで」と言って貴方は両手を広げた。私はそれにつられて、貴方の腕の中で小さく踞る。外は雨風が激しい。此処はと言うと、全く別の世界かの如く静かだった。安心で安全なこの場所で、私はいつの間にか眠りにつく。 貴方の温もりと鼓動が、まるでいつかふたりで見た夜の海のように穏やかだった。 目を覚ますと、私は貴方の服に涎を付けていた。 ごめんねと謝ると、そのシミを見て貴方は淋しそうに微笑んだ。 「愛おしいよ」 そう言って、私の頭をそっと撫でた。 ごめんね。愛して

          黄色信号で停ること

          書いてある文だけが全てな訳がない。 しかし文の持つ力を侮ってはならないのもまた事実だ。 その言葉で誰かを傷付けるのでは無いかと一度立ち止まって考える。私もあなたも。

          call my name

          私には姉がふたりいる。末っ子の私はいつも名前を間違えられていた。 私のことを呼ぶとき、母は決まって長女の名前を呼び、「あっ間違った。」続いて次女の名前を呼び、「じゃなくてー」最後に私の名前を呼ぶ。 私は名前を間違えられることがなによりも嫌だった。 だからきっと、「恋人」という存在が出来る度、その人は名前を間違うことはないから 大好きになる。私は私の名前を正しくいつも、呼んで欲しい。

          不自由を知らなければ 真の自由を知ることは出来ない。

          不自由を知らなければ 真の自由を知ることは出来ない。

          口癖

          "きっと" 「君はこの言葉をよくつかうね」 と、誰かに言われたことがあった。 誰だったのかは今となっては全く思い出すことができない。 私はその時はじめて、その言葉を多用していることに気が付いた。きっとというのは果たして願望か、信頼か、はたまた絶望か。 私にとっては「祈り」だったのかもしれない。 祈るだけということは好きではなかった。しかし祈りが自分を救うこともあると思っているのだ。 そう祈ることこそが実際の物事を遠ざけるみたいで楽だから。 ―そうだったか? 書きながら自

          デジタル人間

          つかってはじめてわかるそのもの自体の魅力、 つかわないからこその魅力、それぞれが存在している。 私は生まれた時から既に世の中がデジタル化しており、それが当たり前だった。 しかし最近の若者の間では、アナログ的なものへの憧れが顕著になりつつある。「平成レトロ」などという言葉ができたり、こぞって昭和の音楽を聴いたり、わざと写真の画質を下げたりする。 私は特に、本は紙がいい。現代社会において電子書籍が主流になりつつあるが、本は紙の方がよいというひとは少なくないのではないだろうか。実物

          デジタル人間

          あの頃の私は死んでしまった

          赦せなかったことが総て赦せてしまったとき、あの頃の私というものが失われてしまったかの様で哀しかった。決して、「赦せない」というのが哀しかったのではないのだ。あの頃抱いていた、たったひとつの赦せない事項について時間が見事に解決してしまったという感じがして悔しかった。 あれほど燃え上がるように赦せなかったあの人を、あの事を、ずっとずっと抱えて生きていけたなら良かったのに。

          あの頃の私は死んでしまった

          自決

          私ずっと傷付いているのよ。 貴方に幸せになってね、と言われてからずっと不幸よ。

          結局貴方の髪は、私が当時して欲しかった 一番好きな髪型になっていた。 もう貴方は「君」ではないのだけれど。

          結局貴方の髪は、私が当時して欲しかった 一番好きな髪型になっていた。 もう貴方は「君」ではないのだけれど。