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レデラジ#32|ありのままの自分が輝く服作り ー fukufuku312前田さんの想いと未来

ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくるをミッションに活動するLedesone(レデソン)のショートラジオ番組「レデラジ」

今回は、発達障害の親子に寄り添う服「fukufuku312(フクフク サンイチニ)」を開発している、代表の前田さんに今後の展望や大事にしていること、これからの社会に期待することについて伺います。

レデラジはnoteではテキストとして、Spotify、Apple Podcast、Youtubeでは音声でお楽しみいただけます。



「発達障害の親子に寄り添う」想いを込めた服作り

Ten:
今回も、前回に引き続き、「fukufuku312(フクフク サンイチニ) 」代表の 前田さん にお越しいただいてます。

前田さんよろしくお願いいたします。

前田:
よろしくお願いいたします。

Ten:
第1回目はどんな服を作っているのかについて、前回の2回目ではどんな経緯で開発されているのかについてお話ししていただきました。

最初は、前田さんご自身が発達障害のある息子さんのために作った服がSNSで広がり、クラウドファンディングをして、一緒に作ってくれるメーカーさんが見つかって、一緒に開発を進めていってるというお話を伺いました。いろいろな出会いや縁があって、開発されているというお話だったんですけど、今後の展望や、どんな服を作っていこうとしているのかなどを今回、お話しできればと思っています。

まず1つ目のお話として伺いたいのですが、fukufuku312の服を作っていく上で、大切にしていることは何ですか?

前田:
「発達障害の親子に寄り添う」というところを大事にしてます。自分も当事者ですし、周りにもさまざまな障害がある仲間がたくさんいるので、その方たちの声を聞くこと。当事者の方の声もですし、保護者目線の声、あとは作業療法士さんなどの専門の知識がある方のご意見も聞きながら作っています。

まず試作品を作って、モニターで試してもらって、意見を出してもらって、また改善してという繰り返しを結構たくさんします。

Ten:
検証をすごく何度も行っているんですね。

前田:
めちゃくちゃ作りましたね。あと「こういう形でいこう!」と決まっても縫製メーカーさんともやっぱり相談しなくてはいけませんし、コストの面でも課題があったりします。

Ten:
なるほど。当事者の方に検証してもらうのは、一つの製品につき、何回ほど行いますか?

前田:
私が素人だったっていう……、今もそうですけど、ど素人なのもあって、あと、ひとりでやってたのもあるんですが、一番最初の服は、1年~2年ぐらいかかりました。

たぶん最初から企業やプロの方にお願いしたりとかすると、そんなことないと思うんですけども……私は本当にど素人で、他にも仕事しつつ子育てもつつで、自分のペースで進めていたというのもあるんですが、そのくらいかかりましたね。

Ten:
僕も企業の方から、例えば通常の製品開発だったら半年で終わるものが、当事者の人たちにしっかり検証してもらいながら良いものを作っていこうとすると、やはり1年かかったりすると聞いたことがあります。なので、企業が作ったとしても、もちろん多少個人でよるかは早いかもしれませんが、ほとんど同じぐらいかかるんではないかと思いますね。

”響くワード”で一般の人にも届ける難しさ

Ten:
前回、前々回の話とかで、一般の人たちにも手にとってもらえるというお話だったんですけど、こういう製品を「当事者のために」と言い過ぎると、「そっか、これは発達障害の人向けの製品なんだ」で終わってしまって、一般の人が手に取らないこともあったりするかと思います。その辺の課題は、どう工夫されてますか?

前田:
いや、それが今のfukufuku312の課題だと思いますね。「触覚過敏の方におすすめ」って書いちゃうと、「そもそも、触覚過敏って何?」みたいな疑問が出てきてしまうじゃないですか。

だから皆さんにわかりやすいように、「敏感肌の方におすすめ」とかにしてしまうと、「でも敏感肌と触覚過敏って違うしな……」とかって思ったりもしますし。でも、当事者の方にはたぶん「触覚過敏の方におすすめ!」の方が響くと思うんですよね。

視覚障害者の方に響くにはまた違うワードがあったりすると思うし、チラシ一つしても1枚じゃ無理な感じがしてますね。

Ten:
なんかもう言葉をいっぱい並べないといけないですよね。

前田:
そうなんですよ。「この人に響かせるには、このワード!」ってなってしまって、結構そこが難しいなと痛感しています。

Ten:
ちょっと話が飛びますが、fukufuku312の名前の由来って何ですか?

前田:
それ、めちゃくちゃ聞かれるんですけど(笑)。私は、もともと事業をしようって思ってなかったので、この服でみんなが幸福になればいいなぐらいの思いで「fukufuku」ってつけたんですよ。その後、息子の服を作ってSNSにアップしてた時に、「fukufuku」でアカウントを取ろうと思ったら、もう既にアカウントを取ってらっしゃる方がいらっしゃって無理だったんです。なので、息子の誕生日が3月12日だったので、後ろにつけたらアカウントが取れたんですね。それを起業するときにそのまま使っただけなんです。なので、そんなに深い意味は無くて。

数字の意味を皆さんにめちゃくちゃ聞かれるんですけど、息子の誕生日という個人情報ダダ漏れ(笑)の感じです。

Ten:
それは僕がLedesoneの名称をつけたときのエピソードに似てますね。Ledesoneは、「Le idee sono infinite」というイタリア語で”アイディアは無限大”という言葉があるんですが、そこからスペルをとっているんです。

最初、「Ledesone」は最後の「e」がない「Ledeson」だったんです。その単語でドメインを取ろうとしたら、できなかったんです。ドイツの電球メーカーに「Ledeson」というのがあるようで。「うわ、どうしよう」と思ったときに、なんとなく「e」を付け足してみたら、「Le idee sono infinite」という言葉の中から一つずつアルファベットを取っているので、逆にバランスがいいなと思って。「あ、これでいこう!」ってなったんです(笑)。

前田:
結構あるあるなのかもしれませんね(笑)、このSNS時代には。


服を通してありのままの自分が輝く世の中にしていきたい

Ten:
ありがとうございます(笑)

今後「こんなことしていきたい」と考えていることはありますか?

前田:
今、ネット販売しかしてなくて、直接商品を見たり触ったりしてもらえる機会が少ないんですね。私も当事者なんでわかるんですけども、服にこだわりがある人はその商品を直接触って肌触りを確かめたいですよね。直接見てもらえる機会として福祉イベントにも出展するようにはしてるんですけども……。出展してみて気づいたのが、福祉の展示会は発達障害者向けじゃない、ということです。

医療ケアの方などが中心で、車椅子だったりベットだったりというような医療機器が多くて、いつも「私、浮いてるな」とちょっと思うんですよ。福祉のイベントなんだから、もうちょっとごちゃまぜで、発達障害の方に向けたイベントや展示会があってもいいのになって思うんですよね。

Ten:
そうなんですよ。そもそも発達障害をテーマに製品やサービスを展示するイベントっていうのがそもそもない。だからこそ、Ledesoneでは「ハッタツソンフェス」を開催しているんです。

2021年から始めて、最初の2年は完全にオンラインだけで企業さんにどういった製品とか取り組みなどを話してもらうだけだったんですけど、去年初めて展示ブースを設けました。そこで、モリサワの「UDデジタル教科書体」というフォントや発達障害の人にも役立つタスク管理アプリなどを実際に展示をしました。その経験から、体験することはすごく大事だなと感じました。

発達特性のある人にも役立つ仕組みやサービスは、企業も最近ようやく作り始めたりはしているけど、それがなかなか必要とする人のところに届かなかったり、当事者側も企業がそういうことをやってるのは知らなかったりするんですよね。

だからハッタツソンフェスで、そういう取り組みを行っている企業も、これからやっていきたい企業も、そういうサービスを求めている当事者の人も一般の人も、集まってもらって体験してもらって一緒に考えることをしていきたいなと思っています。

前田:
いいですよね。発達障害の方が一般就労する先の企業さんとかにも来てもらいたいですね。「これがあったら、あの子こっちでうまく働けるんじゃない?」というヒントになってほしいです。

Ten:
ハッタツソンフェスに参加した企業さんが、「あの企業のこういう製品がすごい良かった!うちにも導入したいです」と出展企業同士で話があったりとか、当事者同士でも「この企業、こんな取り組みしていたんだ」とか「あの会社の商品をもっと買おう!」みたいな流れも、少しずつ生まれてきています。

このイベントに来たら発達特性のある人に役立つ仕組みやサービスの取り組みがわかる!と思っていただけるようなイベントにしていきたいです。

前田:
ぜひ、頑張っていただきたい!そして参加させてください(笑)。

Ten:
ぜひ参加してください(笑)。少し話がずれてしまいましたが……。

前田:
めちゃくちゃ期待しています。fukufuku312の前田 香でもあるんですけど、発達障害の息子を持つ母でもあるので、発達障害に関して頑張ってくださっている企業さんに出会うと、「私が死んでも、息子は大丈夫な世の中になりそうだな」って勇気をもらえるんですよ!

Ten:
いろんな製品やサービスであふれる社会にしていきたいですよね。

前田:
安心して死にたいです(笑)。

Ten:
僕は正直、「これがあるから全て解決!」みたいなものは無いと思っています。ひとり一人違うじゃないですか。例えばリモートワークのほうが働きやすい人もいれば、会社に出勤した方が働きやすい人もいる。服に関してもTシャツは間違えないけどズボンははき間違えるとか、いろいろな人がいますよね。

なので、いろいろな選択肢がある方がいいんじゃないかなと思うんです。そういう選択肢を増やしていくことをやっていきたいですね。

前田:
そうですよね。服も裏表がある服も選べればそうじゃない服も選べるし、デザイン性がすごい高い個性的な服を選べたり、そういう選択肢が増えるといいですね。それがほんと当たり前にあるような、めちゃくちゃ探さないと見つからへんとかじゃなくて、すぐ手に取れるような、そんな世の中がいいですね。

私も服づくりをしていて、目標にあげてるのが、服を通してありのままの自分が輝く世の中にしていけたらなって思ってるので、そのお手伝いができたらいいなとすごく思ってます。

Ten:
なるほど、ありがとうございます。今後はハッタツソンフェスのようなイベントをやったりとか……でも一般の人が買っているのであれば、一般の方向けの服の展示会などにも参加されることもあるんですか?

前田:
昨年、東京のギフトショーに出展しました。

Ten:
そうなんですね!反響はいかがでしたか?

前田:
結構埋もれちゃうんですよね(笑)。いっぱい企業さんがあって、人もいっぱい来て。その中で引っかかるのは、福祉関係の企業さんだったりとか、あとは一般ニーズでミセスの商品を扱ってたり、あと子ども向けの商品を扱ってたりした方はちょっと引っかかってくれましたかね。

Ten:
逆に一般向けの展示会では、たくさんありすぎて埋もれてしまうという課題があるんですね。

前田:
そうです。市場が広すぎるというか。逆に敏感肌の人が集まる展示会とか、お困りごとを起点としたイベントにすると響くのかなと思います。

Ten:
打ち合わせの時も敏感や触覚過敏の人向けのグッズ展示会があればいいのにというお話もされていましたよね。

前田:
そうなんですよ。肌に優しいグッズばかりが集まるイベントとか。そういうのもぜひお願いしたいですね。

Ten:
今年も4月の発達障害啓発週間に合わせて、ハッタツソンフェス2025を大阪で開催します。fukufuku312さんも、今年のハッタツソンフェスに出展していただきます。 イベントの詳細はLedesoneのSNSやnoteで情報を追加していきますので、ぜひチェックしてください。

fukufuku312の服たちも、実際に手に取って触れてもらえる機会ですので、ぜひ来ていただければと思います。

前田さん、全3回、ありがとうございました。

前田:
ありがとうございました。

Ten:
今回もレデラジをお聞きいただきありがとうございます。レデラジでは感想やご意見の他にこんなトピックを取り上げてほしいなどのコメントを募集中です!
次回のレデラジもお楽しみに!


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