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レデラジ#24|これまでのテクニックを詰め込んだ著書『発達障害と生きる親子のための小学校コミュニケーションハック』の見どころとは

ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくるをミッションに活動するLedesone(レデソン)のショートラジオ番組「レデラジ」

今回は、発達障害についてXなどで発信する、なちゅ。さんが出版された著書発達障害と生きる親子のための小学校コミュニケーションハックについてのお話を中心にお聞きします。出版後の反響や学校とのコミュニケーションで一番難しかったところ、子どもと向き合ううえで大切にしている考え方などを伺いました。 

レデラジはnoteではテキストとして、Spotify、Apple Podcast、Youtubeでは音声でお楽しみいただけます。




親である自分自身が、学校を信頼することが一番難しかった

Ten:
Ledesoneがお届けするショートラジオ番組「レデラジ」
モデレーターのTenです。
レデラジでは、毎回さまざまなゲストと一緒にLedesoneが取り組むインクルーシブデザインに関することや見えづらい違いについてお話しをしていきます。

今回も前回に引き続き、X(旧Twitter)でさまざまな活動をされている「なちゅ。」さんにお越しいただいています。
なちゅ。さんよろしくお願いします。

なちゅ:
なちゅ。です。よろしくお願いします。

Ten:
前回はなちゅ。さんが発達障害の当事者として、また当事者の子どもを持つ親として情報発信をされているというお話を伺いました。最近では「発達障害と生きる親子のための小学校コミュニケーションハック」という本を出版されましたよね。

参考:

なちゅ。:
2024年8月9日、ハックの日に出版しました。

Ten:
ほんとですね!それは狙っていたんですか?

なちゅ。:
たまたまこの日になったんですけど、フォロワーさんが発売の告知をしたときに8月9日というのを見て「ハックの日だ!」と教えてくれて。私も担当さんも全く気がついていなかったんですが、それはいい!となって「そういうことにしましょう!」と。

Ten:
そういうことだったんですね。この本はどういう内容になっているんですか?

なちゅ。:
小学校生活を送るにあたっては、いろんな人とのつながりを作っていかなくてはいけないですよね。それは学校や先生だけでなく、他の保護者との関係もそうですし、ご近所さんとのつながりも、小学校生活においては重要になってきます。

あと、障害のある子を育てていると放課後等デイサービスを使うこともあるので、学校とデイサービスと保護者とのコミュニケーションが必要になってくる。それらのコミュニケーションをどのようにやっていくのかを中心に書いた本です。

実は私も苦手なんですよ。コミュニケーションにはずっと苦手意識があって、学校もすごく嫌いだったので…いまも好きではないんですが、でも子どものためには学校と良い関係を築く必要がありますよね。そんな中で必死で今まで何とかやってきたことを積み重ねてきた、記録のような内容になっています。

Ten:
僕自身も発達障害の当事者で、小・中・高と親が学校とすごく密にコミュニケーションをとっていました。学校側に伝えないといけないことや、準備しなきゃいけないことがすごく多いじゃないですか。そういうことができる親御さんもいれば、そうではない人もいますし、がんばって伝えたのに「前例がないから」って却下されてしまうことも、きっとたくさんある。それでもがんばって言い続けていかなくちゃいけなかったりもするので本当に大変だと思います。

なちゅ。さんが、学校とのコミュニケーションで一番難しかった点は何ですか?

なちゅ。:
親である私自身が学校を信用することが一番難しかったですね。でも信用しないと始まらないんですよ。そういう、学校に対しての不信感がすごくありました。

それは特に何かがあったわけではなくて、何にもない段階から、自分の子どもが「障害があるからいじめられるんじゃないか」とか「差別を受けるんじゃないか」という思い込みからくる不安感というのが理由の一つとしてありました。

もうひとつは自分自身が子ども時代に、学校という場所にあまり相性が良くなかったんですね。そもそも学校が嫌いだったので、もとから良い印象がないところからのスタートで。

この二つを抱えたまま学校に行って、先生を信用して、子どものことを学校に伝えなくてはいけない。どう思われるかわからない、どう反応されるかわからない中でやっていくしかない、というのが一番難しかったし、しんどかった点です。

それは私だけじゃなくて、リアルでたくさんの障害のある子をもつ親御さんとつながりがある中でもよく話を聞きますし、またネットでのつながりでも思います。多くの親が乗り越えなくてはいけない壁なんだろうなと思います。

「しんどい」の棚卸し 感情と事実を丁寧に分けて並べてみる

Ten:
そういう実体験をもとに、うまくいった方法をまとめて本にされたんですね。

なちゅ。:
そうですね。結果的にはうまくいったことをまとめてはいるんですが、もともとは私のXアカウントでの発信がベースになっているので、いわゆる日記なんですよ。

私はどうしても短期記憶が弱いので、ずっと覚えておくことが難しい。そのための記録媒体としてXを使っています。あの時どんなことが起こったのか?ということを自分で思い出すためのトリガーとしてXを使っています。後から自分で検索して「ああ、こんなことあったな」とか「あの出来事はいつだったっけ?」とか記憶を引っ張り出すために使っています。

投稿をするときって、自分の中で起こった出来事を言語化して、整理して、投稿するじゃないですか。そういうことを繰り返していると、自分でもその出来事を見つめなおす作業にもなります。それを続けていくうちに「これはこういうふうにしたらよかったんだな」とか考えたことも追加して書いていくので、情報発信にもなっていったという感じですね。

Ten:
この本の目次のなかで、【身動きが取れないときは「しんどい」の棚卸し】という項目がすごく気になったんです。困りごとをどうフォローするかというお話の中で。

僕も小学校3年生の時に親から「LDがある」というのを教えてもらったんですけど、そのときに親と一緒に自分の困りごとを言語化する練習をしたんです。それを親がまとめて学校側に伝えてくれたりとか、年齢が上がって中学・高校生ぐらいになると自分で言えるようになったりしていったんです。困りごとを言語化するというスキルは結構必要ですよね。

なちゅ。:
うちもそれは子どもと一緒にすごくやったところです。

「しんどいの棚卸し」というのは、自分で「しんどいな」とか「うまくいかないな」という状況に直面したときに、【何が起こっていて、どこに問題があるのか】ということを確認する作業です。

頭が痛いとか「身体的にしんどい」ことと、「精神的にしんどい」という気持ちがざわざわしたりとか怒っていたり悲しい気持ちになっていたりする感情の部分。それと起こった事実はそれぞれ別のものですよね。

でも本人からすると全部ぐちゃぐちゃに混ざってしまっている。それを、丁寧に一つずつ分解して並べていかないと問題に対処できないので、自分でそれが事実なのか、感情なのかが区別できるようになれたらいいなと思います。

感情は否定しないで現実との落としどころをすり合わせる

Ten:
でもやっぱり子どもは自分が苦手な部分とか、何がしんどくて今つらいのかということを、うまく言語化することは難しい部分もありますよね。そういう問題はなちゅ。さん的にはどうしたらいいと考えていますか?

なちゅ。:
そうですね。具体的にやっているのは「それはなんで?」「どうして?」と尋ねて、相手の答えを聞くことです。

その際に絶対に気をつけているのは、何を言われても否定しないこと。それを絶対のルールにしています。そうじゃないと子どもも本音を言えないので。

例えば「宿題やりたくない!」と言われたときに、「やりたくない」のは本音なので、その感情自体を無視したらいけないと思うんです。なので、そこから「じゃあ、どれがやりたくないの?」と話を掘り下げていく。逆に最初から「やりたくないなんてダメ!」「宿題はやるもの!」「ここで宿題やらないと、ろく大人にならないぞ!」と言ってしまったら、子どもは今後本音を話せなくなりますよね。

感情は基本的に全肯定するのが、私の中の基本ルールです。嫌は嫌でしょうがない。「嫌なのはわかる。でもこれをやらなくてはいけないという現実もある。さあ、どうしよう?」というところで、どこで落としどころを作るか。現実とどうすり合わせるのか。もちろん「やらない」というのも作戦のひとつではありますけども、その落としどころを子どもと丁寧に確認していくというやり方です。

ただ、子どもそれぞれ理解力は全然違います。例えば、うちは上の子が知的障害があるので問答的なことは難しい部分がある。その子に合わせてどこまで掘り下げるのかは変わってくるかなと思いますね。

「じゃあ、お互いどうやって歩み寄る?」という話をしていきたい

Ten:
ありがとうございます。この書籍は8月9日に発売されたということなんですが、どんな反響や反応がありますか?

なちゅ。:
最初は当事者や同じ境遇にある者同士、悩んでいる人や保護者向けに情報交換的なニュアンスでスタートしたんですけど、支援者の方からの反応がとても多くて驚きました。
先生や障害児支援に携わっているスタッフさん、お医者さんなどが支援者に薦めたいといってくれる方もとても多いです。
親がどんなことを考えているのかがよくわかる、と言っていただけます。

あとよく言っていただくのが「バランス感覚がいい」。どうしてもいろいろなことがある中で相手を責めたくなることって、めっちゃあるじゃないですか(笑)。
ただ、私はなるべくそれはしないことにしていて…本音はありますよ!「こいつぅ~~!!」とか「なんや、この先生は!?」みたいなことはめっちゃありますし、感じていますが、それを前面に出しても問題は絶対に解決しないと思っています。

先生には先生の事情があるし、でもこちらにはこちらの事情や思いもある。そんな中で、基本否定はしないけど、「じゃあ、お互いどうやって歩み寄る?」という話をしていきたいと考えています。

なので、いろんな方向に気を使って、顔色伺っているように見えることもあるかもしれないですけど、それをしておかないと結局落としどころが見つからないんですよ。「誰が悪いか」という犯人探しをしてしまうと、絶対解決しない。

でも、親の本音としてはしたくなるんですよ。したくなるから、気持ちの落としどころとか考え方の切り替え方はかなり、本の中に入っているんじゃないかなと思います。その点を「バランス感覚がいい」と評価していただいているんじゃないかなと。

Ten:
たしかに、内容としても学校側を否定するような書き方のところは全然ないですよね。学校の先生におすすめしたいですね。

なちゅ。:
そう言っていただくことも結構あります。なので、ぜひ先生方は読んで参考にしてください(笑)!

Ten:
先ほど「日記」とおっしゃっていましたけど、自分が体験したことをXにあげて、そこから本にしたり、いろいろなところに広がっていったりしているんですね。

なちゅ。:
そうですね。ただ、いわゆるよくある「当事者エッセイ本」ではないんです。エッセイの要素も多少はありますが、もっと実用的なハックに寄っている内容です。

私の普段の投稿もそうなんですけど、お互いに「これやったら楽になるよ」「これやったら便利だよ」という情報を共有するのが私のスタンスなので、Xの投稿もそういう内容が多いですし、この本もその考えがベースになっているので「すぐに使えるテクニック!」という点で、一冊にまとまっています。

Ten:
ありがとうございます。今回はなちゅ。さんが出版された『発達障害と生きる親子のための小学校コミュニケーションハック』についてお話ししていただきました。次回は、実際に自身の体験や経験をもとにした役立つ方法やアイテム、サービスなどをどのように情報収集して、どのように発信しているのかについて詳しくお伺いしていきたいと思います。

なちゅ。さん、今回もありがとうございました。

なちゅ。:ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

Ten:
今回もレデラジをお聞きいただきありがとうございます。
レデラジでは感想やご意見の他に「こんなトピックを取り上げてほしい!」などのコメントも大募集しています。
次回のレデラジもお楽しみに!


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