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相手への心づかいが行き届く 一生使える「文章の基本」


【書籍情報】

タイトル:相手への心づかいが行き届く 一生使える「文章の基本」
著者:木山泰嗣
出版社:大和出版
定価:1,760円(税込)
出版日:2023年10月13日

【なぜこの本を読むべきか】

文章を書くとは、「読み手への心づかい」を尽くすことである。

つまり、読み手に負担を感じさせないよう、文章に工夫を散りばめる必要があるのだ。

本書は、文章を誤読されずに、きちんと意図を伝える方法を紹介した一冊だ。

本書は以下のような方にオススメしたい。

■相手が気持ちよく読める文章を書きたい
■スムーズに意思疎通ができるようになりたい
■誤読なく、正確かつ簡潔にものごとを伝えたい

今の時代、AIに任せればすぐに文章を書いてくれるし、ネットで調べればフォーマットだってコピペできる。

しかし、刻一刻と変化する状況に応じた「細やかな心づかい」は、書き手であるあなたにしかできない。

【著者紹介】

木山泰嗣

1974年横浜生まれ。税法学者、弁護士。
青山学院大学法学部教授。上智大学法学部法律学科卒。
2003年に弁護士登録。
2015年に実務家から大学教員に転身。
現在は法学教育及び税法研究に専念。
他著書に『教養としての「税法」入門』『弁護士が書いた究極の文章術』などがあり、本書で単著は69冊となる。

【本書のキーポイント】

📖ポイント1

文章を書くとき、「これで相手に伝わるかな?」と一歩立ち止まる。その心づかいが、仕事を円滑に進めることに繋がっていく。

📖ポイント2

「話し言葉」と「書き言葉」では、理解する行為に違いがある。まずは、それぞれの違いを理解しよう。

📖ポイント3

曖昧な文章は、読み手からの信頼をなくす原因となる。文章を書く前には、「断定できる事実」を調べて確認する必要があるのだ。

【1】読み手を想像する

よい文章は、相手に「手間」と「疑問」を感じさせない


文章の基本は、「読み手の立場」に配慮し尽くすことである。

しかし多くの人は、文章を書いている「自分の立場」から離れられていない。

本来は、「読み手の立場」への配慮を心がけさえすれば、文章の修正されるべき箇所が見えてくるはずなのだ。

たとえば、次の文章を読んだとき、あなたはどのように思うだろう。

この件については、以前の会議でも話題になりました。
そのときに検討課題として挙げられた事項にご留意ください。

修正ポイントは2つ。

まず1つ目は、「以前の会議」。

あまりにも漠然としており、いつの会議を指しているのかわからない。

会議を特定し、「以前の会議」を明確にする必要がある。

そして2つ目は、「そのときに検討課題として挙げられた事項」。

ここでの文章の一番の目的は「ご留意ください」にあり、「留意」すべき「事項」に対する注意喚起のはずだ。

にも関わらず、留意事項が何であるかは「以前の会議」における「検討課題」を見ないとわからない……といった構造になっている。

読み手に配慮するのであれば、伝達する人自らが議事録に記載されている「検討課題」にアクセスし、改めて文章に明記する必要がある。

では、修正した文章を見てみよう。

この件については、2024年〇月〇日(火)に実施された第14回の「〇〇プロジェクト担当者会議」でも話題になりました。
そのときに検討課題として挙げられた事項にご留意ください。
検討課題とは、➀商品の検討、②協賛会社の選定、でした(議事録3ページ参照)。
改めて、ご確認ください。

この文章なら、読み手に手間をかけさせることなく、疑問を感じさせることもないだろう。

なぜここまでするかというと、仕事上では小さな認識の違いにより、大きなひずみが生まれる可能性があるからだ。

伝達側の小さなひと手間が、後に双方のためになる。

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信用の基盤は「固有名詞」にあり


文章にはできる限り具体性が必要だ。

そして具体性を持たせるうえで、固有名詞(1つの特定の対象)が大きな役割を果たす。

具体性も固有名詞もない文章は、解釈を読み手に委ねる形となり、相手に「確認の手間」や「必要ない不安」を与える恐れがある。

ただし、諸事情があって意図的に固有名詞を示さない場合はもちろん除く。

まずは、具体性のない文章の例を見ていこう。

では、あとで、ほかの人にも聞いてみたいと思います。

「ほかの人」というのが、たとえばプロジェクトメンバーを指しているのか、メンバー以外も含んでいるのか、状況によってはわからない。

不安を覚えた読み手は、「確認ですが、どなたに意見を聞こうと考えていますか?」といった確認をしなければいけなくなる。

では、具体性のある文章にするにはどうすればいいか。

ポイントは、➀日時、②場所、③範囲、④期限である。

では、明日(➀日時)、ちょうど〇〇の会議(②場所)がありますので、その際に〇〇のメンバー(③範囲)からも意見を聞いておきたいと思います。
結果は、会議後(④期限)にまたお知らせします。

伝えた方向性に問題がなければ、相手から確認する必要はなくなるだろう。

仮に別のメンバーに聞いてほしい場合であっても、固有名詞を用いたことで認識の違いが明らかになり、すり合わせが可能になる。

後のすれ違いを起こさないためにも、具体性を持たせることは重要なのだ。

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どれだけ敬語を使っても「上から目線」はにじみ出る


社会人として適切な文章が書けない人がいる。

ここでは、文法として正しいかどうかの問題は含めていない。

文章に「読み手への心づかい」があるかという意味合いだ。

たとえば、以下のようなメールを、上司が新入社員からもらったとする。

来週の企画会議の資料なのですが、現在我々が作成しているものを、お忙しいのはもちろんわかっていますが、こちらも事前にきっちり見ていただきたいので、現在の案に目を通していただき、明日の朝までに改善すべき点、改善する場合の文案をお示しいただければ助かります。

必死に敬語を使い、日本語として正しいかどうか、いろいろ調べながら書いたことが見てとれる。

ただ、メールを読んだ上司は、「なぜ、あなたに指図を受けなければならないの?」と思うだろう。

なぜなら、新入社員が書いた文章には、相手に対する配慮がないからだ。

新入社員が作成すべき資料にもかかわらず、具体的な要望を提示したうえ、「明日の朝までに」という制限までつけている。

また、上司に対して「我々」と使うのも、我を通すような表現だ。

言うなれば、「上から目線の文章」。

ここで、新入社員は、以下の3つのポイントを意識する必要がある。

➀自分の仕事の現状を報告する
②相手に求める行為は、職務上必要な最小限の1つのみを示す
③あとは相手を尊重し、対応を委ねる

この3つのポイントを用いて、先の文章を修正するとどうなるか。

来週の企画会議の資料の件で、ご連絡差し上げました。
作成中の資料案が完成いたしました(➀)。
添付ファイルでお送りいたしますので、お時間あるときにご確認いただければ幸いです(②)。
お忙しいところ大変恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます(③)。

このような文章であれば、上司は改善点があった際にアドバイスをくれるだろう。

すべては、相手を敬う気持ち、心づかいにある。

【2】簡潔に書く

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