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脳性麻痺とホルモン療法

レクチン高含有食品を摂取するとCYP3A4という酵素が減ってしまい、ホルモンのバランスを崩してしまうことで体の具合を悪くしてしまいます。ホルモンの代謝に関する経路は膨大で複雑怪奇ですが、今回必要なものだけをザックリとまとめてみました。矢印の間には何段階もアミノ酸と酵素の代謝の経路がありますが省略します。

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まず鼻のすぐ裏にある下垂体前葉という部分でACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが分泌されます。これは副腎皮質に作用して糖質コルチコイドなどの副腎皮質ホルモンの分泌を促進する働きがあります。

酵素によって代謝されるとACTHは副腎でDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というホルモンになります。これは男性ホルモンの一種でテストステロンの前駆体です。テストステロンは筋肉をつけてくれる男性ホルモンですが、アロマターゼという酵素によってエストラジオールという女性ホルモンになります。男性ホルモンは必ず後で女性ホルモンになり、女性ホルモンの量が多ければ次に分泌されるACTHの量が調整されてDHEAなどの分泌量も減る仕組みがあります。基本的にACTH-DHEA-テストステロン-エストラジオールの流れが基本的な経路になります。

ACTHをDHEAにするときに必要な酵素が足りなければ別の経路に乗り、コルチゾールというホルモンが副腎から分泌されます。これはいろいろな働きを持つホルモンでとても重要です。テストステロンが筋肉を作るホルモンだとするとコルチゾールは筋肉を溶かすホルモンと考えられます。テストステロンとコルチゾールは1つのシーソーの端と端に位置するものだとイメージするとわかりやすいです。複雑な代謝の経路の結果テストステロンが増えるとコルチゾールが減り、コルチゾールが増えるとテストステロンが減るという構造になります。出発地点は必ずACTHなのでACTHが正常に分泌されることが最も重要です。

またテストステロンが分泌されるとインシュリンが分泌されます。これによってインシュリン用成長因子や上皮成長因子が分泌されて人の脳や骨・筋肉・目などが発達します。子供の発達が遅れるのも高齢者が老化するのもこの働きが悪いせいです。アロマターゼの量が適切なら、成長因子が分泌される経路に乗れますが、テストステロンがテストステロンの働きをきちんと全うすることができないままエストラジオールになってしまっていると認知は上がらず骨や筋肉は作られませんし、視力も悪いままです。

脳性麻痺の子供に限らずすべての人間はこの経路がきちんと調整されていなければ健康に生きていくことができません。

そしてレクチン高含有食品はこのコルチゾールというホルモンを増やす働きがあります。レクチンをはじめとした生体異物除去食が低緊張型脳性麻痺に効果があるのはこれが理由です。


私の子供は低緊張型脳性麻痺で筋肉がつかない体質です。コルチゾールはいつも高かったのでその対策をしたところ筋肉がついて立って歩けるようになりました。

・コルチゾールを減らす
・テストステロンを増やす
・アロマターゼを阻害する
・IGF-1の分泌の経路に乗る

これらに気を配ってアンドロゲン補充療法を開始したところ、子供は立って歩けるだけの筋力をつけることができました。3つの経路のホルモンと酵素の量を薬と食事でコントロールするのです。

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体内のホルモンと酵素の量は食べたものによって変化します。ホルモンを補充すること自体は調整が難しいのでリスクが高いです。毎日変化するホルモンと酵素の量を安定させなければ薬物療法で脳性麻痺を改善させることは難しくなります。ですから生体異物除去食を徹底することは薬物療法を成功させるための基礎になります。


コルチゾールが脳性麻痺改善の鍵!

コルチゾールはいくつかの働きがあります。

まず基本的にコルチゾールは「血糖値を上げるホルモン」です。体温が下がった時に血糖値を上げることによって血圧を上げ、結果的に体温を上げます。ですからコルチゾールが分泌されるのは「体が冷えて体温が下がった時」です。寒い場所にいると分泌されると考えて間違いはありません。そしてその「寒さを感じるのが足元にある」というのもとても重要です。コルチゾール分泌のためのセンサーが足の裏についているので、冷たい床をはだしでペタペタと歩くような人はコルチゾールを大量に浪費しているでしょう。夏にいつも樹脂製のサンダルを履いているとか、靴下やスリッパが嫌いで冬でも裸足でいる人などはリスクが高いです。

このほかにも抗炎症ホルモンとしての役割を持つので体のどこかに傷や感染があればコルチゾールは多く分泌されています。「コルチゾール」は天然のホルモンに対して呼ばれる名前でこれが人工的に生産されたものになると「ステロイド」という名前になります。治療薬として使われているのでご存じの方も多いでしょう。

そしてストレスがかかった時に抗ストレスホルモンとして働きます。これは「怖れ」の感情や長時間の説教などによるストレスに対応するのが特徴す。コルチゾールは必要なタイミングで必要な量だけ適切に分泌されていれば何の問題もありません。ただしこの仕組みが壊れて過剰に分泌されたり逆に材料が枯渇してコルチゾールを作ることができなくなってしまうと問題が生じます。うつ病になったり不眠症の症状が出ます。コルチゾールが枯渇してしまうとアレルギー反応が強く出ますし、癌になる人は「体を温めて癌を撃退しよう」というような指導を受けるはずです。

そのほかにもコルチゾールは目を覚ますホルモンなので出すぎると「不眠」につながります。また「長時間のトレーニング」などでも分泌されます。コルチゾールが多ければクッシング症候群、少なすぎればアジソン病という病気になります。ホルモンは多すぎても少なすぎても行けません。必要なタイミングで必要な量だけ分泌されるように調整がうまくいっていることが最も重要です。

低緊張型脳性麻痺の子供の体の状態はクッシング症候群に近いことが多いです。実際に私の子供は中心性肥満で首の後ろが浮腫んでいて股間は腫れあがっていました。コルチゾール対策がうまくいけばいくほど体に筋肉がついてきて認知が上がってしゃべれるようになっていきました。


コルチゾールを抑えるコツ

①床に絨毯を敷く
これは敷くだけでよいのでとても簡単でなおかつ効果が高いです。床からの冷えを遮断すればコルチゾールの量は格段に減ります。

②オムツを冷やさない
おむつが濡れた時などにお尻が冷えるとコルチゾールが多く出ます。カイロをおむつの外側や服の上から貼って対策をするとかなり改善できます。足元に電気毛布などを置いて温めてやると体全体の筋肉の固さに違いを感じたので想像以上にホルモン量を調整できます。日中は大人が見ているので対策しやすいのですが夜中は見落としがちです。オムツセンサーなどを使ってオムツが冷えすぎないようにチェックすると良いです。

③夜間糖質を補充する
コルチゾールは目を覚ますホルモンでもあります。出すぎると眠れません。実際に私の子供は生後3歳くらいまで1日に2時間くらいしか寝ませんでした。コルチゾールは2時間に1回分泌されるので2時間に1回は目を覚まし、母乳を飲んでいました。卒乳した後も、ブドウ糖を溶かした水を寝ている子供に1時間に1回飲ませるようにしたら1晩中起きずにぐっすりと眠れるようになりできることが増えました。

④就寝中の部屋の温度を温める
コルチゾールは朝3時半から8時半までの間にたくさん分泌されると言われています。地球自体が冷えるからだと思います。その時間帯はエアコンを調整して部屋が暖かくなるようにしたり、毛布を1枚追加するなどして温めてやると体の状態は良くなりました。

⑤長時間の運動をしない
遊びや訓練などで体を動かすときに楽しいからと言って長時間やっていると後で急に体が柔らかくなってしまうことがありました。通常コルチゾールは35分から40分の運動で分泌されると言われていますが子供の場合は15分程度だと思います。休憩を頻繁に入れながら運動を続けることによって筋肉はついてきます。大人の感覚で長時間運動させることは逆効果になるということだけわかっていれば効果的なトレーニングを行えます。

⑥コルチゾールが枯渇しないような栄養を取る
コルチゾールを調整するために必要な栄養素は「L-グルタミン」です。これは刺身などに含まれます。サプリメントとして販売されているのでそれを与えられれば良いのですが子供の場合は飲ませるのが難しいです。私は毎日刺身を食べさせて食べ物からとらせていました。このほかにも亜鉛、マグネシウム、パントテン酸が良いと言われています。肉や魚を多く食べる生活をしていれば不足することはないので余分に食べようと心がけるのはL-グルタミンだけで十分だと思います。

⑦怖いと思うようなものを見せない
怖いと思うものは人それぞれ違うと思いますが私の子供の場合は「名探偵コナンの犯人役の黒い影」をとても恐れていました。サスペンスドラマにも死体や犯人が出てきます。それを見ると毎回恐れていたので、そういった番組を子供に見せるのはやめました。よその子供が親に説教をされたり暴力を振るわれている姿を見た時もひどくおびえていました。学校で子供同士がけんかをしたり先生に怒られていても、体はやわらかくなって低緊張が強く出て発作を起こしました。これは怖れの気持ちでコルチゾールがたくさん分泌されたせいで柔らかくなり、その後必要なときに必要な量を分泌することができなくなって起きた不具合です。大人からしたら大したことないように思えることでも注意深く観察し怖いと思うようなものを見せないようにすることも重要です。

⑧テストステロンを増やすために日焼けをする
コルチゾールを下げるにはテストステロンを増やすのが一番です。間接的なやり方ですがとても効果があります。日焼けをすればビタミンDが増えます。ビタミンDはPXRという核内受容体の基質なのでコルチゾール生産量をコントロールすることができます。

⑨朝日で目を覚ましてテストステロンを増やす
朝カーテンをせずに朝日で目を覚まして、完全に目覚める前にブドウ糖を口の中に入れます。これによってテストステロンが増えるので筋肉がついたのを実感できます。これも間接的にコルチゾールを下げる方法ですが効果があります。

⑩風邪をひかせない
風邪をひくと炎症が起きるのでコルチゾールが上がります。体はやわらかくなり呼吸に関する筋肉が弱くなると寝ている間に気管をふさいで呼吸ができなくなり苦しみます。風邪をひきかけていたらできるだけ早い段階で風邪薬を飲ませて炎症を抑えると良いです。ちょっと寒かったら服を1枚多めに着せるとか、風邪をひいている人のそばに寄らないとか手洗いをしっかりするなど気を付けられることはやっておきましょう。

コルチゾールを抑えないとテストステロンは増えない。テストステロンが増えないと成長因子は増えない。IGF-1が増えないと脳細胞は増えない。脳細胞が正常に機能するようになればACTHやDHEAの分泌も正常になって自力で骨や筋肉を作れる体になっていくのです。だから細かい生活習慣の積み重ねは知らない人からしたら一見無意味に思えると思いますが、続けていると驚くほど子供は元気になります。


糖を足すのがいちばん効く

コルチゾールを下げる薬というものがあります。ケトコナゾールなどの抗菌剤です。水虫などの薬として処方されます。これを症状があるから使うというのであれば問題ありませんが、「コルチゾールを下げるために使う」というのは酵素誘導という行為でとても危険です。薬で誘導しても長期間維持できず死亡などのリスクが高いだけなので賢い方法だとは言えません。一時だけ調整できても元に戻るならそれは正しくない方法です。

結局いろいろと試してみて何がいちばん効果があったかというと「ブドウ糖を飲ませる」ということでした。血糖値を上げるホルモンが出すぎているということは「血糖値を強制的に糖質で上げてやればコルチゾールが分泌される必要がなくなる」ということです。

「糖を足す」なんてとても簡単です。薬局でブドウ糖を買ってきて水に溶かして飲ませるだけでいいんです。これを思いついて始めた頃は「太るのではないか?」と心配されましたが、最初に2kgほど太った後筋肉がついてきたので逆に4kg痩せました。コルチゾールが減ってテストステロンが増えたので筋肉がついたんです。


アロマターゼを阻害する方法:薬or食べ物

コルチゾールが高くて低緊張であるならアロマターゼは明らかに多いはずです。そして脳にダメージがあるなら神経保護作用でアロマターゼの量は必ず多くなっているはず。これによって全身のアロマターゼの量も多くなるのではないかと思います。そこでこれを阻害する方法を考えてみました。

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乳がんの抗がん剤などで使われる「アロマシン」や「アリミデックス」と言ったお薬は直接的にアロマターゼの量を減らしてくれます。多少CYP3A4を阻害しますが、摂取量を多くしすぎなければ問題はないと思います。

アロマターゼを大幅に阻害した場合はIGF-1も阻害されてしまうので、与える量はとても少ない量を目指します。ほかの食べ物の調整が取れていない場合は少ない量だと筋肉の質に変化が見られません。食事療法がうまくいっているときに行うと効果的です。


インドール-3-カルビノールという化合物もアロマターゼと結合して減らします。インドール-3-カルビノールはアブラナ科の野菜に含まれているのでこれらを食事に取り入れることによって阻害することは可能ですがサプリメントで取る方が簡単です。

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インドール-3-カルビノールはグルコシノレートに関係しているので糖鎖分解酵素につながります。私は脱髄からくる発作やけいれんにこれらが関係すると考えているので、生のアブラナ科を取ることには不安があります。子供も与えれば食べますがその後しばらくたってから調子が悪くなるので今現在は避けています。以前与えていた時は筋肉は固くなっていましたが、舌に大きな穴が開くようになりました。これは良くないことです。

そしてまたインドール-3-カルビノールを子供に与えるためにリンゴジュースに混ぜた時15分くらいでインドール臭が消えて独特の辛みもなくなりました。みかんジュースやレモン汁でも同じことが起きたのでクエン酸に反応して不活性化してしまったのかもと思いました。無味無臭になったものを飲んでも筋肉に差は見られませんでした。

味やにおいのついた飲み物に混ぜない限りは凄まじいインドール臭の飲み物を子供に与えることは難しいです。いろいろな理由でインドール-3-カルビノールを使用することはなくなりました。


植物性エストロゲンを除去することでアロマターゼ量を調整する

インドール-3-カルビノールとクエン酸の関係以外にもアロマターゼに影響を与える食材があります。それは植物性エストロゲンと言われる成分を含む野菜や果物です。

植物性エストロゲンを含む食材を食べた時にもエストラジオールの受容体に作用してアロマターゼの働きは強くなったように感じることがありました。

大豆製品、小麦製品、ほうれん草、キク科・セリ科のハーブやスパイス、甘草、亜麻仁、大麦、オーツ麦、レンズ豆、アルファルファ、りんご、米ぬか、小麦胚芽、人参、ホップ(ビール)、コーヒー、ゴマといった食材はアロマターゼを増やします。アロマターゼを減らす食生活というのは、レクチン除去食を中心としたものとほぼ同じものでした。ということは「アブラナ科の植物をどのようにメニューに組み込んでいくか」ということが課題になってきます。

エストロゲンが少ないせいで体調不良を起こしている人はこれらが体に良い食べ物なのでしょうが、私たちの体質には合いません。「ほとんどの植物を取らない」ということは、現代社会ではなかなか常識外れです。元気な人からしてみれば「おいしいチョコレートが食べれなくなる」「毎日コーヒーを飲んでいるのにやめろと言うのか?」「トマトが大好物なのに!」と反発されるでしょう。私の子供もリンゴジュースが大好物で毎日飲んでいたのですが今では1カ月に1回程度しか飲ませていません。ジュースを与えないようにしたときは子供も怒っていました。ですがすぐに体調は良くなり発作の回数も減り、子供も無理に飲みたがらなくなりました。

ホルモンや酵素を誘導する薬物療法全般に言えることですが、「薬よりも食べ物を調整したほうが格段に体に違いが出ます。ホルモン剤などを足すということは自己生産分が減る可能性があるので使う量はできる限り減らしたいですし、薬を使わなくてもよい状態に持って行きたいです。薬を使うよりも先に食事療法でベースを作っておいて、できるだけ少ない量の薬を使うようにしていくことが重要です。ですから食べ物で調整するということは必要不可欠なのです。


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