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外国語から日本語へ:時代によって異なる訳し方。

英語のレッスンで「reality」という言葉の意味を説明していると、生徒さんが「日本語で言うと「現実」みたいな言葉ですね。」と言いました。

 そう、その通り!  日本語の「現実」は、realityから訳された言葉なのです。

 日本国語大辞典によると「現実」は、actuality, reality の訳語と記されています。つまり、現実という言葉は元から日本語にはなく、英語のactuality, realityから訳された言葉なのです。いつ頃訳されたか明確な記述はありませんが、明治初期の書物に「現実」の記述がみられると日本国語大辞典に書かれています。

 明治時代は、西洋からたくさんの新しい考え方・概念が、日本に入ってきました。その新しい考え方・概念を表すために、新しい言葉も必要でした。そこで英語を始めとした西洋の言葉が、多く日本語に訳されました。

 明治時代の翻訳の特徴は、訳された言葉の多くが漢字の言葉になったことです。本来外国語だった言葉が漢字になるというのは、ある意味トリックのような仕掛けがあると私は思います。
 漢字を見ると、私たちはなんとなくその言葉は古くから日本にあるとか、漢字のルーツである中国だと思ってしまいませんか。本来は西洋の言葉でも、漢字になるとなんとなく自分たちの言葉のように馴染みが出てくる、こんなトリックがあるように思います。
 馴染みが出てくると違和感なく言葉を使うようになり、訳された言葉が、日本語の中に違和感なく浸透していったように私は考えています。

 日本語から英語に訳そうと辞書を引く中で、ふとその言葉が探していた英語の言葉が語源だったと知り、さらにそれが明治時代に訳された言葉と記されていると、私はいつも明治時代にこの言葉を訳した人の仕事に脱帽します。

 これに対して、最近は、新しい言葉を訳す時に、カタカナを使うことがほとんどです。
 例えば、internetという言葉は、カタカナで表します。カタカナは外国から来た言葉を表記するものですから、カタカナを見ると私たちは、その言葉は他の国から来たんだろうなと思います。 漢字に訳された言葉に比べると、カタカナの言葉は、常に外国を意識します。元の言葉が日本語じゃないとわかりながら使う言葉です。

 訳す際に文字を選ぶことは、日本語の中に言葉がどのように浸透していくかを変えるように感じます。
 どの訳し方が正しいという答えはありませんが、その時代・ニーズに合わせて言葉が選ばれていると私は思います。

 皆さんが日ごろ聞く・見るの言葉は、どこから来た言葉でしょうか。 言葉のルーツを知り、訳された言葉や時期を見てみると、その言葉をまた違った角度からとらえられると思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
皆さんの一日が、言葉と文化でちょっと素敵になりますように。

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