いってらっしゃい

「いってきます」

小学生の頃私は初めて一人で飛行機に乗った。
羽田から函館の飛行時間は1時間20分。
私はリュックを背負いなおした。毎年、函館には年2回行っているけれど一人で行くのは今回が初めてだ。

「お一人でご搭乗ですね、初めてかな?」

航空会社のお姉さんが、私に笑顔で優しく声をかけた。私はドキドキ。

「はい!」
「窓側がいい?それとも通路側?」
「窓側がいいです」

カウンターの内側のその後ろにはベルトコンベアでスーツケースや大きな荷物がどんどん運ばれて、奥へ奥へと吸い込まれて見えなくなってゆく。ちらっとだけ見えたコンピュータ画面には英語や数字や記号がたくさん。お姉さんはキーをカタカタと操作している。まるで魔法みたい。

羽田発函館行き搭乗時間15時半のチケット、それを持っているとまるで自分がひと回りもふた回りも大人になったような気がした。

「いってらっしゃい」

お姉さんはその言葉で私にふわり飛ぶ魔法をかけてくれた。

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