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ミックスでベースをブーストする方法、5選

溜めておいた記事をふと訳したので前回はちょっと古い記事になってしまっていました。改めてiZotopeのホームページに行ったらこういうの訳すほうが良いなと思ったので、前回からの続きではありませんが、新しいものを訳します。
というか、Neutron2と書いてある時点で、書いてる間ずっとあった違和感の原因に気付かなかったのはいかんですね、3が出て割と経つのに……。

他の曲と比べると肉体的な存在感を放つ曲というものもあります。このパワフルなサウンドと肉体的だと思う感覚は、低音と中音域を丁寧に処理することから生まれます。今回は、ベースをブーストしてミックスに質量感を与えるような方法をご紹介したいと思います。

1. ベース音がどこからやってくるのか決めておく
低音の感覚は非常に良いものですが、いろんな音源が低音を生んでいるため、とても複雑なものになっています。その結果、無くて良いような音域の音をほったらかしにしてしまいがちで、ベースを大きくしたことが実はマスキングによってローエンドの存在感を損ねているということが起きます。

ミキシングの早い段階でローエンドがどのトラックから来るのか決めておくのは質量感のあるミックスをするには楽な方法ですし、ベース的なトラックを後にどれだけ入れるのかを制限もしておくのも良いでしょう。

最近のヒップホップのミックスでは、ベース音のソースは808のキック単体です。ロックでのキックはちょっと控えめにして、ベースやギターのローエンドを重視しましょう。一方、エレクトロミュージックにしきたりはほとんどありません。ワブリングのベースか、強めのブレイクビーツか、はたまた連打したキックによってベース音が質量感を得るかもしれません。普遍的なやり方ですが、知っておいてもいいアイディアがあります。ベース音がどこからやってくるのか決めておけば、ローエンドのインパクトを曲から消してしまうような周波数帯の被りを避けるようになる、というものです。

2. 気兼ねなくハイパスフィルターをかける
ハイパスフィルターを使えば、スペクトラムに出てきたローエンドの邪魔となるレゾナンスやハムを取り除けることが多いです。ただし、どの楽器にもかけて、200Hz以下をむやみに切る必要はありません。考えなしのハイパスフィルターは、曲を簡単に破壊します。

では、どうしたらやりすぎだなと気がつけるようになるのでしょうか。まずはじめに、音源を聴いてみましょう。曲を聴いてみて、起き上がって体を動かしたくなるサウンドになっていますか?もしくはサウンドが痩せて締め付けられた感じになってるなと思ったりしませんか?どの楽器も孤立して寂しい状態になっていませんか?

あんまり自信が持てなかったり、シンプルにセカンドオピニオンが欲しいというのであれば、Tonal Balance Controlをマスターに挿すことをおすすめします。音源を分析してくれて、視覚的にミックスの周波数を表示してくれるので、周波数のバランスが悪いところがどこかわかります。ローエンドやミッドが狙ったレンジ(青い部分)よりも低い位置にあれば、ベースの部分にフィルターがかかり過ぎではないかと推測されるわけです。

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Tonal Balance Control : ローはどこへ消えた?

Tonal Balance Controlには、orchestral、modern、そしてbass heavyの3つの機能がついています。もしこのカテゴリーとはマッチしないな、もっと正確に読み込みたいなと感じたならば、リファレンス楽曲もしくはジャンルを代表する楽曲を使って、カスタムのカーブを作るのも良いでしょう。

3. サステインを持ち上げる
パンチは音のアタックで決まります。キックもしくはスネアが鳴った瞬間がその瞬間です。Neutron3のトランジェントシェイパーを使えば、アタックの調整が簡単に行なえます。アタックを決めたら、次はサステインです。サステイン、つまりサウンドの伸びる部分ですが、アタックが鳴った次の瞬間にやってきます。ベースサウンドにとって、サステインはローエンドの特徴を引き立たせ、印象に残るサウンドにしてくれるものです。

ミックス音源を聴いて、ドラムがパンチがあるのに豊満さに欠けるというのならば、サウンドのサステインの100-200Hz付近をトランジェントシェイパーで持ち上げてみましょう。これは(大元の)筆者が実際にオーディオのサンプルを使ってやってみたものですが、最初のパートが元のサウンドで、後半のパートがサステインを引き伸ばしたものです。

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トランジェントシェイパー

後半でも良いトランジェントが保たれていますが、余白部分が伸びた感じがして、大きなドラムになった印象があります。僅かな違いですが、もう少しだけ良くなった点があります。耳に近いところで鳴っているのです。逆に、アタックを強くしてパンチを出したければ、このプロセスの全く逆のことを行ってサステインを短くしてください。

4. 昔ながらのサイン波のテクニックを使ってみる
もし壁を揺らすようなサウンドがほしいなら、このクラシックな方法を試してみてください。40-60Hzのトーンを作り、ゲートを挿して、キックをゲートのサイドチェインのトリガーにしてください。このやり方ならキックが鳴って消える間、ディープなベースが鳴ります。ゲートのスレッショルドとリリースの設定をちょうどよいものにしてくださいね。

このトリックが役に立つタイミングはどんな時でしょうか。アコースティックドラムがぼやっとしていて、ローエンドの対処のしようがない時、さくっとローエンドを綺麗にできます。ハイパスフィルターをだいたい50Hzくらいからかけてクリーンなトーンが入り込むスペースを作ることで、アコースティックドラムから綺麗な低音が鳴り、ミックスに質量感が出ます。

同様にエレクトロでもシンセポップでも同じことができます。キックが良い感じだけどローエンドが足りないなという時(TR-707やLinn Drumとかね)、サブをその下に加えます。チープなサウンドがパワフルになったと感じると思いますよ。

5. ベースを広げてみる、でも必要なところだけ
オーディオ愛好家の大半は、ベースやローエンドのサウンドはモノでと言います。その理由の一つは、200Hz以下の音がどこで鳴っているか正確にはわからないので、ステレオにする必要がないからだと言われています。もう一つ懸念されるのは、モノのスピーカーでミックスされると、広げすぎたベース音が位相の問題を起こす可能性があるからです。

Ozone8のImagerを使うと、シグナルがステレオでどう広がるかの調整を、任意でセットした4つのバンドを使って行うことができます。もしくはLearnボタンを押して、バンドのクロスオーバーの位置をプログラムすることもできます。

アウトプットのメーターの下にあるmono/stereoボタンを押せば、ステレオのシグナルをモノで聞きながらリファレンスすることもできます。

まさにモノの信号の場合、Stereoizeという機能を使って丁寧に広がりを持たせてください。そうすれば、ミックスの中で広がりすぎてぐちゃぐちゃするようなことなく深みとフルネス(訳注:厚み、くらいが妥当な表現でしょうか)を加えることができます。これは完全なモノの信号の時だけ使用できます。ステレオトラックをモノにした信号には使えません。それと、自分がどのあたりの周波数を広げたいのかよく考えていただいて、むやみに200Hz以下の帯域を強調しないようにしてください。

この方法だと、モノの状態を維持しながらも、リスナーには広がりのあるベーストラックだと印象を与えることができます。実際には、高域へのハーモニクスが広がっているとそう感じられるだけ、というわけなのですが。

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Ozone Imager - 広がりのある「ような」ベースは、実際にはこうなっています

まとめ
質量感のあるミックスをした人には、この記事はある種参考になると思います。しかし、コンプレッサーをかける、サイン波を作る、ステレオに広げるその前に、まずは低音がちゃんと入り込めるだけのスペースを作る努力をすべきです。エンジニアやプロデューサーの多くがサイドなサウンドを作り出せずに苦しんでいますが、単純にローエンドに音が行き過ぎていて、ベースのトラックが広がる余裕がないだけなのです。

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