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気づけばずいぶん年を重ねました。これからは明るいほうへ、なりたいほうへ、向かってゆきた…

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気づけばずいぶん年を重ねました。これからは明るいほうへ、なりたいほうへ、向かってゆきたいです。

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レコードとサイフォンと

 彼は、高校生なのに一人暮らしをしていた。今では高架になった私鉄は、そのころまだ地面を走っていた。その沿線の、駅から歩いてすぐの小さな、古いアパート。わたしたちは、仲が良かった。  部活がえりには駅までいっしょに帰った。駅からはお互い反対方向なので、彼がわたしのホームに来て、わたしを送ってくれる。でも、きっとかならず、何台かはやり過ごした。バイバイと手を振ったら、案外すぐに背をむけて歩き出す。そういうところが好きだった。彼はよく、水色の、アディダスのトレーナーを着ていた。  

    • モスキート音は聞こえない

       黒板消しを教室の入り口にはさんで落としたのは昭和。今ではモスキート音が生徒のいたずらあるあるだ。最近は、教室でパソコンやタブレットなどの端末機を使わせることも多い。生徒は、先生が聞こえないのをいいことに、その強さで先生の老化をはかり、面白がる。マズい?というタイミングでやめるので、実際いたずらされても気づかない先生も多いだろう。  ところが、あまりにいつまでも先生が気づかないと、生徒のほうがあちこちでもがき苦しみだす。「やめてー」教室は阿鼻叫喚。最後は首謀者みずからが「うお

      • ひとりで生きる

        「ほんとうに困ったとき、誰に相談する?」 油引きの木の床に大きなソファのある郊外のカフェ。友人はちょっと座り直して聞く。 「ほんとに困ったとき?」 「そう。」 うーんーと考えて答えられないでいると、 「そういうひとがいるっていうのが、きっとしあわせってことなんだよ。」  なにがあっても、それがいつでも、SOSを出せるひと。出せばまちがいなく駆けつけてくれるひと。必ず自分を守ってくれるひと。  先日、うっかり側道に擦ってパンクをしてしまった。車を買って2年、リアトランクにスペア

      レコードとサイフォンと