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みんなで一緒に考える授業のカタチ
ナビの本棚コーナー、今回はあきが担当します。
今年度、フルスクール高学年(5・6年生混合)の算数を担当しながら、「学んでほしいことは何かな?」「どんな授業がいいかな?」と日々考えています。そんな中で出会った本の中から、特に授業で活かされた2冊を紹介します。
授業のベースになった一冊
まず紹介するのは『教科書では学べない数学的思考 「ウ~ン!」と「アハ!」から学ぶ』です。この本には、算数や数学を考える上で大事な視点がたくさん詰まっています。
特に印象的だったのは、「答えが当たっているかどうかではなく、問題を解く過程でどんな気づきがあったかが大事」という考え方です。些細な例ですが、場合の数の問題を解くときに「赤・青・黄をR・B・Yと略すと書くのが楽になる」と気づくことも学びです。「自分はどう考えていたのか?」「考える過程でどんな発見があったのか?」といったプロセスの中には自分なりの学びがあります。
この考えを授業に取り入れて、1つの問題を複数回の授業をかけてじっくり取り組むようにしました。答えをすぐに出す必要はなく、自分の解き方やその問題の中で何か新しい発見をすることを重視しました。
じっくり取り組むからこそ気づけることもあるのだと教えてくれた事例を紹介します。例えば、3学期の授業で多角形について学んでいたとき、「多角形の対角線の本数にどんな法則があるのかを見つけましょう」というオープンクエスチョンの問題に取り組んでいた人がいました(後述するように、どの問題に取り組めるかは選択式にしていました)。その人は、下のノートの写真からも分かるように、何度も対角線を数え直した結果、増え方に法則があることを発見しました。
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しかし、彼はそこで終わらず、百角形の対角線の本数を計算し始め、さらに他の法則を見つけ出していました。このように、自分のペースで問題を解けると、「答えが見つかったからおしまい」とならず、興味があればさらに追求し、新しい発見につながることがあります。
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3学期の授業を変えるきっかけになった一冊
3学期には、これまでのやり方を少し変えてみました。大きな変更点は「問題を選べるようにしたこと」です。異学年混合の授業ということもあり、算数の既習範囲がバラバラである状況に対応することが理由の一つですが、自分に合った問題を選ぶことも算数を学ぶ上で大事なプロセスかと思ったのも大きな理由です。
新しい形式で進めている中、上手くいっていたところもあれば、そうでないところもあり、どう改善しようかなといろいろ考えていました。そんな時に思い出したのが、『子どものことを子どもにきく』という本です。
この本では、著者が自分の子どもにインタビューをしている様子が書かれています。そこで、「子どもたちに直接聞いてみよう!」と思い、円になって「今の授業の形式、どう?」と話し合ってみました。
すると、「問題を選べるのはすごくいい!」「でも、振り返りは同じ問題を解いた人同士でしたい」という意見が出てきました。僕は当初、「問題を解くときは同じ問題を解いている人同士で集まって、振り返りは違う問題を解いた人同士で行うのが良さそう」と考えていました。ジグソー学習法(※)のように、同じ問題を解いた人同士で考えを深め、それを他の人にも共有する流れを想定していました。実際に、授業では解いている間は同系統の問題を解く人を緩やかにまとめ、単元の振り返りはグループごとに共有する形を取っていました。
しかし、子どもたちの話を聞いてみると、「問題を解くときは好きな場所でやりたい」「他の人に答えを教えられずに自分で解きたい」という意見が数人から挙がりました。また、「解いていない問題の振り返りは共有しにくい」との声もありました。当初の予想とは真逆の意見でした。もちろん授業設計の意図として当初の形にこだわりたい気持ちもありましたが、子どもたちの声や実際の授業の様子を踏まえると、それは別の方法で工夫した方が良さそうと感じました。
そこで、次の単元では、問題を解くときは好きな場所で取り組めるようにし、振り返りは同じ問題を解いた人同士でやる形を提案。「いいんじゃない?」と子どもたちも賛成してくれたので、一旦はこれで進めてみようと思います。
いろんな学び方を試しながら
本や授業見学で得たアイデアを試しつつ、子どもたちの意見も聞いてみる。その中で、「こうすればもっと面白くなるかも」「このやり方は続けたいな」と試行錯誤しながら進めていけたらと思います。これからも、柔軟に学び方を工夫しながら、より良い授業を作っていきたいです。
※ジグソー学習法とは、グループ学習の一種で、グループの各メンバーが異なる内容を学び、それを持ち寄って全体の理解を深める方法