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悔しさも優しさも成長の証 —百人一首大会の舞台裏—
毎年恒例の百人一首大会。
団体戦と個人戦があり、団体戦の優勝チームと個人戦上位3位に入ると「お茶会」に参加できる。
この日のために、1月に入ってから毎日のように練習してきた。
行きのバスでは耳で読み札を聞いて、帰りの会が終わったらすぐにホールに集まり練習の時間を作る。
「今日は◯枚取れた!」
「今日は全然あかんかったな〜」
そんな言葉を交わしながらバスに乗る子どもたちの姿を見てると、日々の積み重ねが自信につながっているのがよくわかる。
大会当日——静寂と熱気が交差する瞬間
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いよいよ本番。
いつもは賑やかなホールが、一瞬で静まり返る。
上着を脱ぎ、腕まくりをして気合いを入れる子どもたち。
読み札が読まれると、みんなの視線が一斉に札へ向かう。
狙いを定めて、1枚に集中する子
最初の一言で瞬時に札を取る子
なかなか取れなくて焦る子
手が重なり合う場面もあれば、読み札を待つ緊張感が伝わってくる場面もある。
誰もが真剣そのもの。
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「やりたくない」——心を動かした仲間の一言
そんな中、ホールの隅で小さく身を縮めている子がいた。
「百人一首やりたくない...」
「だって取れないもん...」
その声には、自信のなさがにじんでいた。
それに気づいたのは、中高学年の子たちだった。
「見てるだけでもいいよ!一緒にやろう!」
その一言で、その子の体が少し動く。
最初は見ているだけだったのに、気づけば自然と札に手を伸ばしていた。
すると、隣にいた二人の子がそっと札を譲る。
「やったね!取れたね!」
彼の笑顔を見て、自分のことのように喜ぶ仲間たち。
たった一言で、たった一枚の札で、こんなにも心が動く。
その温かさに、胸がじんと熱くなった。
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涙の理由——悔しさも、成長の証
大会が終わった後、達成感に満ちた子どもたちの笑顔が広がる。
でも、その中でフードを深く被って、膝を抱えている子がいた。
肩を震わせて、涙を流している。
周りの子たちはそっと寄り添う。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
「なんで泣いてるの?」
彼は答えられないまま。
「大丈夫!俺が見てるから、みんなは掃除行ってきて〜」
そう言って残った子が、ぽつりとつぶやいた。
「頑張ったな」
「俺も1年生の時は全然取れんかったわ〜」
「泣きたいときもあるよな〜」
「来年もあるから」
多くを語るわけではなく、励ますわけでもない。
ただ、彼の気持ちを受け止めるように。
この言葉が、どれだけ救いになるだろう。
悔しさは、それだけ頑張った証。
そして、その悔しさを理解してくれる仲間がいることは、何よりの財産だ。
結果発表と、その先にある成長
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4回戦を終えた後、結果が発表された。
団体戦の総獲得枚数、個人戦の順位——
表彰される子がいれば、惜しくも届かなかった子もいる。
でも、数字だけじゃ測れないものがここにはあった。
苦手なことにチャレンジしたこと
仲間と喜びを分かち合ったこと
悔しさをバネにして、次へと進もうとする姿勢
この大会を通して、子どもたちは確かに成長していた。
おわりに
毎日、子どもたちから学ぶことばかり。
悔しさも、優しさも、すべてが成長の糧になる。
来年の百人一首大会では、どんな姿を見せてくれるんだろう?
きっと、今日よりも少しだけ強く、たくましくなった彼らに出会えるはず。
その日を楽しみに、また日々を重ねていきたい。
さくちゃん