仲裁ファシリテーションの科学。争いごとを9つの段階で考える。 ~黒川イギリス出張記①~
皆さんこんにちは。
プログラム主宰の黒川公晴です。
5月に弾丸でイギリスへ行ってきました。Human Insight社(オランダ)主催のPartners Retreatに招待されたためです。
昨年に引き続き、2度目の参加になりますが、イギリス片田舎の農村に世界中から組織開発・人材開発のプロフェッショナルが集まりお互いのメソッドを披露し合うというとてもエキサイティングな場でした。
本日から数回に分けて、この出張から得たいくつかの学びをお送りしたいと思います。
今回はまず、その中でもとても興味深かった仲裁ファシリテーションの科学について、「メディエーション」理論を用いて紹介します。
前後編に分けてお届けします。
仲裁ファシリテーション手法の1つ、メディエーションとは?
「メディエーション」という言葉をご存知でしょうか?
直訳すると「調停」という和訳になるのですが、紛争の解決手段、仲裁ファシリテーションの1つです。
通常はメディエーターと言われる第三者が、紛争当事者間の対話を促しながら、お互いの考え方を変容させ、納得のいく合意と関係再構築を支援するというのが一連の流れです。
私もよく、グローバル企業で生じる異文化間の軋轢や対立に対してメディエーションの依頼を受けることがあります。
そのような中で、今回とある理論に出会い、「こんなに体系だった理論があるなんて!」と非常に新鮮でしたので、その理論のポイントをご紹介したいと思います。
あらゆる紛争に共通する9つの段階
まず、「メディエーションが必要な状況とは?」について考えます。
フリードリヒ・グラスルの紛争エスカレーションモデルは、組織内や個人間の紛争がどのように発展し、エスカレートしていくかを説明しています。
紛争の段階を9つに分け、それぞれの段階での特徴と適切な介入方法を示しています。あなた自身の体験や、身の回りで起こっている「紛争」を思い浮かべながら読んでみてください。
グラスルの紛争エスカレーションモデル
第1段階:緊張
意見の不一致や誤解が生じる。
互いの立場は硬直化するが、まだ紛争があるとも認知されていない。
第2段階: 議論
議論が始まり、お互いを説き伏せるモードに。
白か黒かの発想になっていく。感情を伴う。
第3段階: 行動
議論は失われ、相手を打ち負かすための行動が増える。
対立は明白となり共感は下がる。
第4段階: 崩壊
信頼が失われ、協力関係が崩壊する。
双方が相手を悪者と見なし、敵対心が強まる。
双方自分の味方を探し始める。
第5段階: 面子の攻撃
相手の面子や名誉を攻撃する。
嘘を含め公然と相手を非難するようになる。
第6段階: 脅迫
脅迫や強制的な手段を用い始める。
対立はさらに深刻化する。
第7段階: 小競り合い
小さな衝突や嫌がらせが頻発し、対立が日常的になり、不安が慢性化する。
第8段階: 破壊的行動
物理的な破壊行為や深刻な嫌がらせが発生し、
組織や個人に大きな損害を与える。
第9段階: 共に奈落の底へ
敵を殲滅しようと自衛本能さえも疎かになる。
共倒れの一途を辿る。
段階を辿るほどに恐ろしくなりますね・・・。
世界中に起きる国家間の紛争から、隣人・同僚間の対立まで、
このモデルで見ると診断しやすくなります。
メディエ―ションの価値が発揮されるのはどの段階?
では、メディエ―ションはどの段階においてもその価値を発揮するのしょうか。
第1〜3段階は、まだ当事者同士での解決の余地があります。
第7段階以降は、法的または強制的な介入が必要か、あるいは手遅れの状態です。
つまり、「メディエーション」が介入価値を発揮するのは第4〜6段階
ということになります。
ヨーロッパではこのメディエーターという職業が比較的認知されており、法的な介入や仲裁が必要となる前にメディエーションの有資格者が介入して解決する、というのが割とポピュラーな慣行としてあるそうです。
では実際にどのようにメディエーションするのでしょうか?
次回はメディエ―ションのポイントについて
シェアしていきたいと思います。
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