【SS】違法クローン【ボケ学会】
かつて都市伝説として有名になった『ドッペルゲンガー』をご存知だろうか。自分そっくりの人間に出会うと死んでしまうという話。
22世紀中盤になって、人間のクローン作成は珍しいことではなくなった。自分の記憶を引き継がせる者、単に労働力として採用する者…さまざまな用途にクローンは使われた。
大手のクローン制作会社”CH”が違法クローンを作成していたとわかったのは、そんな時代の最中である。
「うわあ…見たくない」
警察からの連絡を受けて、僕は工事現場の映像を見ていた。僕のクローンは大型ビル建設現場で労働力として使われていた。
「あなたがそこに行くと、違法クローン"ドッペルゲンガー"は消滅します」
「消滅?」
「政府の認可・プロテクトを受けていないクローンは、オリジナル個体に遭遇すると消滅するのです」
警察官たちはそう言うと、僕を工事現場に案内した。
「警察だ!!」
突入した僕たちを見て、作業員はざわめいた。自分と同じ顔の男たちで
埋め尽くされた空間は、気味が悪くて仕方ない。
「……あれ?」
一向にドッペルゲンガーは消滅しない。警察官たちも驚いている。どういうことだろう。そのとき
「毎度ー。大勝軒でーす」
おかもちを持った男性が現場に来た。顔を見ると、僕と同じ顔。
あ、と思った瞬間、僕の意識は途絶えた。
「…何すか、これ!」
出前を届けに来た男は驚いている。その顔は消えた大量のドッペルゲンガーと同じ、特徴に乏しいありふれた顔だった。
「オリジナルは、そっちかよ!」
警察官たちは頭を抱えた。
だが、突入した警官隊のうちの一人が消滅していたことには、彼らは誰も気付いていなかった。
往々にして『他人の顔』というものは、意外と覚えられないものだ。
了
#ボケ学会
こちらに参加しています。初参加!
ありがとうございました~。
あとがき
僕のドッペルゲンガーがいるらしい。
あながち冗談ではない。行った覚えのない場所で僕を見かけたと主張する友人が多数いるのだ。それが卑猥なお店だったりするので、非常にタチが悪い。
…本当に僕じゃないんだ、信じてくれ!!
……はい、というわけで。
新しい企画に参加させていただきました。ボケとしてのクオリティはどうなんだろう…。ただ、書くのは楽しかった。
また参加させてくださいませ~。