
【SS】服装指定【#シロクマ文芸部】
十二月っぽい服装で来て、と陽世さんは言った。
彼女と付き合って三年。デートの際には毎回服装の指定がある。『お洒落な服』とかありふれたものではなく、『陽気な芸術家のような』だとか、『爽やかな海外俳優のような』という斬新な指定が多い。そして、毎回と言っていいほど彼女はこう言うのだ。
「なんか違う」と。
今回の指定はいつもと違う。僕はそう感じていた。あまりにも『普通すぎる』のだ。
きっと、今こそ僕の腕の見せ所だ。
これまでとは違う、斬新な僕を見せてやる。
街行く人の視線が痛い。
だが、今回こそ彼女を笑わせる自信がある。
僕が待ち合わせに着て行ったのは、鮮やかな緑の革ジャン。それに真紅のカラーデニムを合わせた。靴は真っ白なブーツ。クリスマスカラーと、雪の白を組み合わせた。我ながらなかなかのセンス。色合い的にはイタリアの国旗と言えなくもないけど…。
更に、胸元に仕込んだスイッチを押すと、革ジャンの背中に僕が設置した電飾が光り輝く。人間クリスマスツリー。これこそまさしく『十二月っぽい』服だ。
「おまたせ……何、その格好?」
僕を見た陽世さんは、真っ赤な顔で笑いを堪えていた。
今回は僕の思惑通りウケた。やっと彼女の笑いのツボにヒットした。
だが、ひとつだけ予想外のことがあった。
陽世さんがご両親を連れて来ていたことだ。
結婚してからわかったことだが、二人は僕のことを売れない芸術家だと思ったらしい。そして『十二月っぽい』という服装指定は、あの日はとても冷える予報だったので暖かくして来てほしいという、陽世さんの単なる配慮だったそうだ。
あの後一度だけ、結婚式の余興で電飾革ジャンを着た。
電飾を点灯させたとき、お義父さんは涙を流して笑っていた。母からは何故だか「体を張ったね」と言われた。腑に落ちない。
それ以来、電飾革ジャンはクローゼットの奥にしまってある。
了(764字)
こちらに参加しています。
あとがき
作中の『陽世』は、日向坂46の山口陽世さんよりお借りしました。
ぱる。僕はぱるを見ていると、いつも幸せな気持ちになる。可愛らしいのは勿論だけど、人柄とか、全部を含めて素敵だと常々思っている。何より、にぶぱるでいてくれてありがとう。僕にとってまぎれもない救いでした。これからも活躍を願ってます。『ゴーフルと君』、大好きです。三期生の更なる活躍を願っている。冬も来たし、体に気をつけてほしい。
さて、電飾といえばクリスマス。皆さん、準備はお済みですか?
僕は、何も予定がない。なんなら、その数日前に病院に行くくらい。何かそれらしいことを…。
というわけで
緑色の革ジャンと赤いデニムを身に纏い、そこらを歩き回ろうと思います(冗談)
皆さんにとって、素敵な12月になりますように。
いいなと思ったら応援しよう!
