缶蹴り恋愛逃走中【毎週ショートショートnote】
妻が家を出て行って、もうすぐ2週間になる。
「懐かしいアルバムを御覧なさい」
置手紙には、それだけ記してあった。
幼馴染から恋になった。どちらから告白したのかさえ忘れた。
私はアルバムを見返しながら考えていた。どうすれば、君は帰ってくる。
ある写真が目に留まった。私と妻、弟たちの5人で缶蹴りをしたときの写真。
セピア色の景色を背に、幼い頃の妻が笑っている。
この頃には、もう君が好きだった。缶蹴りから始まった恋は愛になった、はずだった。
「缶蹴りの後は、あの神社まで走ろう!」
妻の声が頭に響いたとき、私はもう家を飛び出していた。私たちがかつて暮らした団地を抜け、裏の神社へと向かう。
切れた息を整えながら、境内を見渡す。
狛犬の口に紙が挟まっているのが見えた。引き抜いて見ると、そこには妻の字で
「ようやくたどり着いたのね。次は小学校!」
と記してあった。
缶蹴りから始まった私たちの恋は、壮大な鬼ごっこへと姿を変えたようだ。
了(401字)
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あとがき
僕の脳内では、この夫婦は丸3年間にわたって追いかけっこを続ける予定です。
遊び心のある女性は大好きだが、ここまでやられるとどうなんだろうか…。自分でもわからない。
万が一、日向坂46のにぶちゃんが(以下略)
続きを書いてみても面白いかもしれない。週1連載にでもしようかな。かっこいいタイトルをつけて書こうと思います、はい(冗談)
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