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この中にお殿様はいらっしゃいますか【毎週ショートショートnote】

敵国で和睦を締結し、私は帰路に着いた。城に足を踏み入れた私は愕然とした。門番から家老まで、皆同じ顔をしているのだ。見覚えのあるようなないような、特徴のない顔。
「これは、どういうことだ?」
すれ違った男に問う。すると
「お主の居ぬ間に奇病が流行ってのぅ。殿も、我々と同じお姿じゃ。殿を見つけ、和睦を報告せい」
と彼は言った。

それから、私は城内を駆け回った。
いくら待っても殿は現れない。直接探すことにしたのだ。
すれ違う者は、皆同じ顔。
男も女も、皆同じ顔。
これは、幻術なのではないか?和睦を望まぬ敵国の策略だとしたら…。
―私は、消される?

だが様子を窺ううちに、それは杞憂だとわかった。城内の人間もお互いがわからないようで、逐一名を尋ねている。
混沌―。これをそう呼ばずして、何と呼ぶのだ。行き交う特徴のない顔。気が狂いそうだ。
私は叫んだ。
「この中に、殿はいらっしゃらないのか!?」

了(383字)


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久しぶりのショートショート。僕、腕が落ちた気がする…。
滅多に書かない時代物。主観的に見ても練習が必要。頑張ろう。
楽しんでいただければ幸いです。

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ナル
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