釜揚げ師走【毎週ショートショートnote】
閉店間際のスーパーの売り場で、釜揚げ師走を見つけた。
「やっと…あったー!」
私は釜揚げ師走を天に掲げた。これで私たち家族は年を越せる。
2024年を境に、12月が来なくなった。
学者たちが調べたところ、時空の歪みにより12月だけが結晶となってしまい、その結晶を摂取しなければ12月、果ては次の年を迎えられないことが判明した。
私たち家族はずっと2024年にいた。
何度も繰り返した11月も今日で終わりだ。
時空が歪んでいる割に、成長や老化は止まってくれなかった。
息子は小学3年生のはずだが、身長は既に180cmを越え、立派な髭を蓄えている。明日から、これがランドセルを背負って学校に行くのか…。
皆で釜揚げ師走を頬張りながら、夢であることを願った。
「…なんて夢」
ベッドから起き上がった私は、寝ている息子を見た。
かわいらしい少年が、いびきを書いていた。
台所のゴミ箱に『釜揚げ師走』のパッケージを見つけて仰天したことは言うまでもない。
了(408字)
こちらに参加しています。よろしくお願いします。
あとがき
終わらない11月。
12月は何かと忙しい。なんだってそんな時期に連載の準備なんて始めてしまったんだろう…?でも、毎週ショートショートnoteだけは参加するつもりでいる。よろしくお願いします。
未来が来ることが怖いという気持ちもある。こんな世の中だし、体調も悪いし。背中から翼が生えてくるのかというくらい痛い。
とはいえ、いろいろと良くなるかもしれない。未来は誰にもわからないのだ。
信じるのはしんどい。それを続けるのは、半ば意地かもしれない。
僕は幸せになる。周囲の人間、大好きな人たちを巻き込んで、みんなで幸せになる。
意地で、そう信じている。
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