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【SS】僕らの解決策【ボケ学会】

「娘には蛇蝎だかつの如く嫌われていてね…」

部長はそう言って、バーの外を見た。お酒を飲んでもいい年齢なのか一見しただけでは判別できない女性たちが、客引きをしている。たしかもう客引きって駄目なんじゃなかったっけ、いいんだっけ。話半分の僕をよそに部長は話を続ける。

「蛇みたいって言ったのがよくなかったみたいで」

「蛇?」

急な展開で、僕の意識は部長の話に戻る。蛇みたいな娘。メデューサか、エキドナというんだったか。

「ああ。娘の推しの男性アイドルを『蛇みたいだ』って言ってしまったんだ」

そう言って部長はスマホの画面を見せた。たしかに爬虫類のような顔。蛇と言われれば、そう見えないこともない。

「どうしたら、仲直りできるかな…」

涙目の部長を見て、僕は考えを巡らせた。部長の過去の発言を思い出し、僕はある手段をひらめいた。

「…視点を変えましょう。蛇以外の生き物に例えるんです」

部長は「それだ!」と叫んだ。よく考えると、ここに至るまでで相当に酔っていたのだと思う。僕らの解決策は、間違っていた。
二人で思案した結果、ある生き物に例えることが決まった。



翌日出社した部長の頬には、引っかき傷があった。

「…部長」

僕が声を掛けると、部長は悲しそうに笑い

「トカゲってさ、ほぼ蛇と同じ顔だもんね」

とだけ言って、泣き出した。

了(541字)



#ボケ学会

お久しぶりにこちらに参加しています。

あとがき

酒に酔ってるときは何かを決めちゃだめ。


本当に、一生後悔することもあるから。僕はその経験はないけど。
…何だ、その目は。本当にないぞ。数々の失敗こそあれど、何かを決めたことはない。そもそも決められないくらいに酔うんだから(以下略)

蛇。そこまで苦手じゃない。触ろうと思えば触れる。
さて、そんな僕の蛇にまつわる切ないエピソードを添付しておく。閲覧数と好感度を増やそうじゃないか。休んだ分を取り戻そう。


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ナル
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