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【SS】銀河鉄道

どうしようもないほど静かで、美しい夜だった。
僕はベッドから這い出した。思うように動かないはずの体が、重さを感じさせない。
玄関のドアを開け、冬の風を受けた。羽織ったカーディガンが風に揺れる。夜空を見上げた。いつものように銀河鉄道が翔けて行く。この星を旅立った友人たちは、元気でいるだろうか。
遠ざかる銀河鉄道に手を振った。僕はひとり、ここに残ることを決断したのだ。引き止める誰かがいたわけでもない。あの線路の向こうが嫌なわけでもない。ただ、ひとりでいたいと思った。

カーディガンのポケットから、一通の手紙が落ちた。今は懐かしい君がくれた、優しい言葉の数々。
僕のいない世界でも、君は元気でいるはずだ。そうであれ、と何度願ったのだろう。君の事だけがずっと気がかりだ。だけど、今更僕の言葉を待つはずもない。
ありがとう、と呟いてみた。どこかで、花が揺れるようなあの声がしないか、探してしまった。僕は少しだけ笑う。
ただ君の人生が、晴れやかでありますように。
玄関のドアを閉めた。心だけはひとりになれないままに。



あとがき
これはリハビリのようなものだ。
本格的に書けない。最近は…というと愚痴になってしまいそうなのでやめる。愚痴さえも言語化しがたい。
執筆を再開するわけではない。ただ、書けたので投稿した。
大切な友人を想って書いた。その方に届けばいいな、とどこかで期待している。その友人の人生が、輝いていきますように。

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ナル
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