長距離恋愛販売中【毎週ショートショートnote】
私は列車の車窓にすがり、涙を流した。
「また会えるわ、愛してる!」
彼は息でガラスを曇らせ、「あいしてる」と書いた。汽笛が鳴り響き、駅員が私の体を車体から引き離した。
「愛してる、愛してる!」
列車は戦地へと彼を運んでいく。私は膝から地面に崩れ落ちた。
「カット!!」
監督の声で、私たち演者は現実へと帰って来た。
「明里ちゃん、いい芝居だったよ」
監督は軽薄な言動には似合わず、演技を見る目に定評がある。裏表もない人なので、素直に褒め言葉を受け取ることにする。
「ありがとうございます。いよいよこのドラマも最終回ですね」
「うん。最後までよろしくね」
監督はそう言うと、撮影した場面を再び見返し始めた。
役者になって7年。さまざまな役を演じ、『売って』きた。
現在は『長距離恋愛』という商品を販売中の私は、来週から『敏腕弁護士』という新商品のため、新しい現場へ行く。
これからも役者として数多の人生を売っていくのだろう。
了(397字)
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あとがき
説明不要だと思いますが、『明里』という名前は僕の生涯の推し・日向坂46の丹生明里さんよりお借りしました。大好きすぎて書きながら泣いてた僕を助けてくれ。
ちなみに、なんですけど、丹生ちゃんが出演している『室井慎次 生き続ける者』が11月15日より公開(先行上映はもうしてる)です。
まだ僕見てないので、絶対にネタバレしないでくれ…。
間違ってもダチョウ倶楽部のアレじゃないので、絶対にネタバレしないでくれよ…。
繰り返すけど、フリじゃないから(以下略)
俳優って、すごい。
僕は自分の演技力のなさを知っているので、より強くそう思うのだけれど。色んな人生を生きるって、難しいと思うけど憧れる生き方だ。
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