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【SS】ターボ婆の孫
トンネル内を車で走行中に、猛スピードで追いかけてくる老婆の話はご存知だろうか。
『ターボ婆』と呼ばれることも多い彼女には、ある秘密がある。
今日は、その話をしよう。
「希来里、希来里!」
婆ちゃんが私を呼ぶ声がする。あと5分、あと5分…。
「起きろ、希来里!『仕事』じゃあ!」
婆ちゃんの絶叫が響く。時刻は深夜1時。遠くで犬の遠吠えがする。きっと春日さんちのサブローだ。
「婆ちゃん…今日くらい『ターボ婆』がいなくても…」
そう言いながら私は再び眠りに落ちる。婆ちゃんは私の頬をばちんと叩く。
「痛い、何すんの!」
「『ターボ婆』じゃない、韋駄天だ!それに、家業を馬鹿にするんじゃないよ」
まったくこれだから最近の、などとブツブツ言いながら、婆ちゃんはユニフォームを用意してくれた。
『ターボ婆』もとい『韋駄天』は、明治の頃から続くうちの家業である。猛スピードで走行する車への警告だけでなく、トンネル内での犯罪抑止など、仕事は多岐にわたる。
…まあ、実際は走るだけなんだけど。
「よし、準備はいいね希来里。『まじない』をかけるよ」
この『まじない』のおかげで、私たち一族は凄まじい速さで走ることができる。これがなければ、家業は続けられない。
体がポカポカしてきた。術が効いてきたのだろう。
「これでよし。それじゃ希来里、頼んだよ」
婆ちゃん―先々代ターボ婆のお見送りを受けて、私は仕事に向かった。
私には目標がある。
仕事中に失踪した先代ターボ婆―お母さんを見つけること。
そして、こんな仕事を一刻も早くやめることだ。
夜間ひっきりなしに走っているせいで授業中に熟睡、私の成績は惨憺たるものだった。
「こんな仕事早くやめて、毎晩ぐっすり眠ってやるぅぅぅぅ!!」
叫び声を夜空に置き去りにして、私は今日も走り続ける。
了
あとがき
以降は有料で配信します(冗談)
『希来里』は日向坂46の竹内希来里さんからお借りしました。
きらりんちょ。最近の活躍が目覚しい。どこまでその輝きを増し続けるのか。楽しみにしている。きらりんちょの影響でうっすらラップを聴き始めたのは内緒の話。これからも応援してます。寒暖差のある毎日ですので、お体に気をつけて。
あと、4期生全体の話であるが、舞台『五等分の花嫁』おめでとうございます。今から原作追いかけよう…。
ターボ婆、呼び方色々あるみたいで、うちでは『100キロ婆』だった。なんで『婆』なんだろう。爺じゃだめなのか。まあ、どっちでも怖いけど。
コミカルに書けたけど、ショートショートって言うより、連載の第一話みたいになっちゃった…。
希望あれば、続き書きます、多分。
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