読むサイエンスラバー!「はやぶさ」プロジェクトリーダーが振り返る、プロジェクト達成の秘訣
LeaL がお届けしている Podcast”サイエンスラバー”。今回はなんと!小型探査機「はやぶさ」プロジェクトのプロジェクトリーダーを務めた川口淳一郎さんをお迎えすることができました!
番組では川口さんがプロジェクトを遂行するうえで大切にしていた心構えについて伺いました。また収録の前日(3月7日)には「H3ロケット打ち上げ失敗」という残念なニュースが入ってきたのですが、川口さんはこの「失敗」をどう見たのかも伺うことができました。本記事ではその一部を抜粋してご紹介します。「はやぶさ」を成功させた川口さんが語るからこそとても重みのある言葉、ぜひお読みください!
プロジェクトは拍手喝采が目的ではない
小池:川口さんの著書やインタビューを読むと、目的達成への執念をとても感じました。川口さんは「ベスト」にこだわらないことを大事にされているような気がしました。
川口淳一郎さん:
もちろんプロジェクトを立ち上げる時はベストを考えます。一番高い目標を掲げていくんですが、実際にプロジェクトが始まって飛行が始まると、考え方は変えざるを得なくなってきますよね。
私も色々なプロジェクトに参加してきた中で、ベストなことを探し続けていても時間ばかり掛かって結局何にもならないことも多かったんですよね。あえて言うと「及第点を高い確率で取りに行く」という考え方をしないとプロジェクトは転がっていかないんですよね。クリアできるんだったら、その方法を取って行く必要があるんです。
エベレストにシャツ1枚で登頂したらそれはもう拍手喝采です。でも失敗したら単に遭難した人にしかならない。きちんとした装備で酸素ボンベを背負った人が登頂に成功すると、その人は成功した人なんです。
瀬戸:確かにそうですね。
もちろん拍手喝采は素晴らしいですが、拍手喝采を狙ってプロジェクトをやっているわけではないですよね。最後までやり遂げないと意味がないんです。運用の段階ではセカンドベストで良いという考え方を取らないといけないんです。
研究は違いますけどね。研究は「研ぎ究める」ことですから。最後までやり抜かないといけないけど、いつ終わるか分からないし達成できるかも分からないのが研究。だから、研究とプロジェクトは違うんですよね。
小池:研究は一番を取らないと意味がないという瞬間はたくさんあると思います。でも「はやぶさ」は工学ミッションだから、色々な手段を選択していくことが重要だったのですね。
どの業界のどの分野でも潤沢なリソースが与えられているプロジェクトってないですよね。お金はこれだけしかない、人はこれだけしかいない、時間はこれだけしかない。そういう三重苦の中で前進を図るべきものですよね。だからそこで「研ぎ究める」ことをしてしまうと意味がない。というかダメなんですよ。
試験機としてのH3ロケットの成果に目を向けるべき
小池:昨日(2023年3月7日)、H3ロケットの打ち上げが失敗しました。川口さんは、昨日のことや今の日本の宇宙開発をどう感じましたか?
宇宙開発そのものについて言うと、とてもリスクが大きい事業であることは確かです。これをきちんと認識しなくてはいけないと思いますね。なぜリスクが高いかというと、試行回数が非常に少ないからなんです。
瀬戸:試せないんですね。
試すことを許してもらえない。日本の場合はお金もないから特にそうです。H3ロケットには実用衛星を積んでいましたよね。本当は初号機というのはそうじゃないんですよ。
初号機は、輸送能力や機体としての完成度を高めるための試験機なので「失敗やむなし」です。昨日も新しく開発した部分である一段目はきちんと飛びました。これは大きな成果です。
現状は過剰な期待を押し付けているところがあると思います。今まで1発も打ち上げてないものに必ず成功しなきゃいけないとプレッシャーをかける方が変ですよね。
小池:実験の位置付けや、成功/失敗に対する解像度を上げたうえで議論をするのがすごく重要ですね。
瀬戸:飛ぶか飛ばないかだけを見るのではなくて、その意義まで知って応援したいです。
Podcastへのリンク
本編では、ここからさらに深掘りして日本の科学がブレイクスルーを生むために大切なことなども伺いました!ぜひ併せてお楽しみください!
予習編【川口淳一郎さん予習回】「はやぶさプロジェクト」ここがすごかった!
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※予習編には川口淳一郎さんは出演しておりません
前編【プロジェクトリーダー登場!】「はやぶさ」成功の裏の組織論
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後編【軌道の魔術師・川口淳一郎】はやぶさの描いた軌跡
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