Inverted Angelをプレイした
社会人になって初めて年末年始に休みをもらえたためゲームを消化している。
その内の1本、買うだけ買って放置していた『Inverted Angel』をプレイしたのでその感想です。
いきなり話が逸れるが学生時代、所謂エロゲーにハマり様々なノベルゲーをやってきて辿り着いた感想はこの業界は全く進歩するつもりがないだった。
代わり映えのしない紙芝居システムや、テキスト量を稼ぐためだけに増長されていく無駄な描写やストーリーなどあまりにもユーザーの善意に甘える要素が多すぎる。
成長していったのはイラスト面だけだがそれは他の業界も同じように成長している上、未だにLive2Dすら取り入れていないメーカーの方が多い世界だ。
そんな商業エロゲに嫌気が差して同人やインディーズにハマりノベルゲームの未来を見た作品が『Inverted Angel』だった。
『Inverted Angel』とは
ある日、プレイヤーの家に訪ねてきた恋人を自称する見知らぬ女性とインターフォンを通して会話をしながら彼女の正体を探るゲームである。
こういった推理要素については『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』など用意されている選択肢から正解を選び続けるものが多い中で、このゲームは基本的にはプレイヤーが彼女について推理を自由にテキストを入力して物語を進めていく。
入力されるテキストだがAIを通して判断してくれるようでムラはあるもののこちらの意図を汲み取って近しい推理に導いてくれる。
そして推理を続けながら会話を進めると彼女に不審な点や矛盾が見つかっていき、彼女の正体が判明していくわけだが、この"正体"が一癖も二癖もある。
彼女の正体というものがプレイヤーの推理によって分岐するのだ。
このノベルゲーム(厳密にはノベルゲームではないのかもしれない)なのにプレイヤーが介入できる上、この先もさらに発展できる可能性を感じれたことにとても感激していた。
彼女の正体について ※ネタバレなし
当然ネタバレになるので多くは語れないが、8個のエンディングと10個のバッドエンドがある。
バッドエンドは正体にたどり着けず終わる事もあれば特殊なエンディングなどもあるため彼女の正体については現時点では8つである。
どのルートも恋人を名乗る見知らぬ女性が突然訪ねてきたらどんな可能性があるか?を前提に進めていくととても楽しい。
「プレイヤーが彼女のことを忘れているだけでは?」
「彼女はプレイヤーが生み出した妄想なのでは?」
「恋人のフリをして押しかけてきた押し売り業者では?」
などなど。
在り来りな可能性もあれば突拍子も無い可能性もある。
先ほど述べたようにエンディング自体は8個しか無いため、実際にはあくまで推測するだけで終わる可能性もあるがこの先のアップデードがあれば是非追加していってほしい。
エンディングについて ※ネタバレあり
辿り着いたエンディング順に語っていきたい。
①Fool on the Sugar Board 死んで治すほどでない馬鹿でありたい
プレイヤーが彼女のこと忘れているだけでは?という推理から発展していったエンディング。
純粋に彼女との会話にある矛盾を指摘していくと辿り着ける短編ミステリー小説のような結末だった。
真相に近づくほどプレイヤーがクズ野郎であることが発覚したり、彼女の目的が鮮明になっていくストーリーは感心させられた。
プレイヤーの本質がルートに入り始めてから現れ始める点や、登場しない第三者が介入する可能性などこのゲームの全体像を理解できたことを考えると一番最初に入って良かったルートだと思う。
②Cheesecake Hallucination 明後日の方向の綺麗な明日を
彼女が本人も知らないプレイヤーの弟のことを知っていたことから発展したエンディング。
なぜ知っていたかについて頭を抱えながら「未来人だから」と入力したら通ってこのゲームへの好感度がマックスになった。
未来で救われた彼女が、3年後死んでしまうプレイヤーを救いにタイムリープするも、ここで彼女に助けられてしまうと現在の彼女が救われないとプレイヤーが救いの手を断る展開はかなり好み。
しかし一度未来人説を肯定した彼女の真相は……未来人のふりをしたストーカーでしたというオチ。
個人的に一番好きなルート。
エピローグで「嘘を信じ込ませるコツは、本当の話を混ぜることだよ」と彼女も言っていた上、弟の件を知っていたことも解決していないのでもしかしたら本当に未来人なのかもしれない。
③Invalid Angel 私はあなたの恋人
一度しか辿り着けない少し特殊なエンディング。
1つくらいあるだろうと思っていた彼女がこちらに介入してくるメタルート。
しかし真エンドを見たあとに思い返してみると彼女もシステムであり繰り返す被害者にも見える。
ちなみに最後の表示される「荳頑嶌縺阪&繧後◆繧「繧ッ繧ソ繝シ繝阪ャ繝医Ρ繝シ繧ッを保存しました」を復元すると「上書きされたアクターネットワークを保存しました」になった。
ChatGPTに一体何なのか聞いたら
「人間(アクター)と非人間(アクター)が相互に関係しながら社会を構築しているという考え方」と説明されたが全く意味がわからなかった。
すべてのエンディングを見ないと真エンドへ入れないことを考えると画面越しのプレイヤー(人間)と画面内の彼女(非人間)がこのエンディングで接触したことで真エンドが生まれた的な話なのかも。
④Chocolate Hideout やたら綺麗に汚れた記憶
とある選択をすると作中内に出てくる場所名や用語を検索することができるようになる。
プレイヤーが感染している例のアレについて調べると衝撃の事実が判明する。
実はこのウイルスは例のアレではなく、強い好意を持った特定の相手を忘れてしまうという作中で登場するウイルスだったといった話。
若干旬を過ぎている気がするがあーあれねと受け流してしまいがちな要素をトリックに使われているので純粋に関心してしまった。
とは言ったものの、ただ記憶障害なだけでしただけは終わらず、プレイヤーには束縛の強い元カノがいてトラウマになっていた、彼女はそのカウンセリングに来ておりその後恋人になった、元カノを忘れられないプレイヤーに彼女がウイルスを感染させたなど二転三転していく。
結果忘れたのは今の恋人である彼女のことで元カノのことは彼女との出会いに関わるため一緒に忘れてしまっていた。
本当に好意を持っている相手のことが判明するという純愛のようなエンディングだった。
唯一綺麗に彼女とプレイヤーが結ばれる結末だが……。
エピローグで彼女が買ってきたペットボトルの蓋が空いているのは、完治して元カノのことも思い出すのを防ぐため再び感染させようとしているためなんて考えるのはやめよう。
⑤Higher Girl Pudding 女子力は自分のために
なんとなく進んでいたらプレイヤーは実は女で彼女の恋人であるこの家の住民のストーカーというバッドエンドに辿り着いた。
しばらくしてからよく考えたらプレイヤーも女ならお互い2股をかけられていたサレ女同士という展開もあるのでは?と気付いた。
特別な展開もなく、日常のようなノーマルエンドだった。
⑥Rusty Caramel Cage みんな生活が人質みたい
必要以上に天使というワードが出てくるので悪魔というワードを入れてみたらAIが「強引な勧誘や訪問販売などの悪人」と誘導してくれたのでそのまま進めてみたら辿り着いたエンディング。
プレイヤーはサイコパスで彼女はそれを上回るサイコパスだったというぶっ飛んだルート。
犯罪を犯したプレイヤーを脅迫してくる展開かと思ったら、運命を感じて勝手に共犯となり恋人と思い込むなんて誰が予想できるんだ。
ファッションサイコパスごっこだったプレイヤーが本物のサイコパスに侵食されていく夢みたいなふわふわした会話はゾクゾクした。
このルートでまだ未実装の展開を見た気がするがなんて入力したのか覚えていない。
⑦Scarlet Icecream あまくてすっぱい味がしたの
スカーレットというタイトルからグロ系かなと思っていたがまったく見つからず、このエンディングだけは調べた。
攻略内容を見たけどこのルートに自力で入るのは無理な気がする。
なにか見落とししているのかもしれないが。
プレイヤーは人肉の培養肉を食べてみたと思っており、細胞の提供を依頼した女性の後輩が彼女という展開。
しかし実は提供された細胞は女性の代わりに彼女が提供したものだった。
1つ上のエンディング『Rusty Caramel Cage』と違い、なかなかのサイコパスであるプレイヤーは細胞の本当の提供主を知らないまま、本物の味に興味を持ってしまうのだった。
いやーなるほどねなんて思っていたらこれだけでは終わらなかった。
プレイヤーはサイコパスで彼女は被害者の関係者だと思っていたら彼女もまぁまぁ同じくらいのサイコパスだったというグロルート。
エピローグがちょっとというかかなり難解だった。
・乱雑に放り出されていた脚は彼女の恋敵である先輩だから。
・男性の遺体にまばらに引きちぎられた窪みがあるのは彼女が食べたから。
ここまではわかったが
・転がっている褐色のガラス瓶
・彼女が書き残した付箋
・溶け出していた緋色の生肉
この3つは未だに悩んでいる。
褐色の瓶は男性の遺体に使用された硝酸塩など防腐剤だろうか。
付箋の意味は冒頭で述べていた「もう動けなくなる君のために買い物してあげるの、ちょっとドキドキしちゃった」と繋がっている?
しかし温めて食べてくださいとは繋がらないので、もっとシンプルに他の人間に自分の細胞を使った溶け出している緋色の培養肉を食べてもらい、細胞の底まで愛してほしかっただけなのかもしれない。
⑧Inverted Angel 天使は足音が鳴らない
タイトルにもなっているし、プロローグや他ルートでもあからさまに出てくるワードなので想像はしていたがロックされており進めなかった所謂トゥルーエンド。
攻略情報の発信は禁止されており、口を滑らすことが怖いのでここで述べることはない。
バッドエンドを除くエンディングについては以上。
このnoteを書くにあたって何度か読み直してみたら冒頭部分の会話に結構ネタバレが散りばめられていた。
バッドエンドは扉を開けてしまい彼女に殺されるパターンもあれば、この時点では知り得ない情報を指摘してしまい逆になぜ知っているのか問い詰められるメタ系もある。
全て語ると尋常じゃない量になりそうなのでここまでとする。
最後に
道中、チューリングテストやストックホルム症候群など様々な聞き慣れた言葉や聞き慣れない言葉について彼女とする会話がとても楽しい。
一時期流行っていたエロゲをしていたら哲学を語られていた作品たちが好きな人は好きなキャッチボールだと思う。
また何度か述べたように展開としては存在するが、続きやルートが存在しないケースを見かけた。
今後アップデートされるのかもしれないが、ほぼ無限に彼女を作り続けられるシステムであるのでまた新しい別の見知らぬ彼女と出会えることを心より期待している。
彼女が言ってた通り言葉にできるのは考えていることのほんのひとかけらとのことで、きっと自分の中にここに書いたこと以上の思いがあるのだろう。
おわり