オグナ 小説(10)
↑ここまでのお話
オトタチバナヒメはタケオシヤマタリネの養女で小碓命との間にワカタケヒコというお子が居る。
他にも養子として引き取っていて9人の子の母だ。
小碓命の后のフタジイリヒメに次いで2番目の妃で近侍している、
学問にも礼法にも通じた有能な女性だ。
「過去には大国主がやっていたように平和的に友好関係を結ぶために政略結婚は有効な手立てよ。」
オトタチバナヒメは言う
「でも、尾張はすでに友好な関係だし必要ないでしょう。」
私は答える。
私達は階に並んで座って話している。
「うーん、誰か心に決めた人が?」
「居ません。」
「オウスは好みではない?」
「…いえ、そんな事は…。」
私は鼻と口を右手で隠すと視線を逸らした。
「難しく考えてはダメよ。言ってしまえばオウスはここに長くは留まらない。あなたが純粋な事は分かるけど一度関係を結ぶことで一族郎党恩恵に預かることができるわ。嫌がって良いことなんで何も無い。抗うことが出来ないなら楽しんでしまったほうが楽よ。」
美人の悟りきった物言いに理解半分呆れ半分。
「オトタチバナヒメに私は受け容れられているのでしょうか?」
「それはこれからの貴女次第でしょうね。愚かに騒ぐだけの女なら要らないわ。」
「…、返事はもう少し考えてからでも良いですか?」
「良いわよ。オウスにもっとハッパ掛けておくわね。」
用は済んだとばかりに立ち上がって綺麗な礼をするとそのままスルスルと衣擦れの音だけ残して去っていった。
あいつか!
この政略結婚の黒幕はあいつなのか!
どこの世界に自分の夫に他の女推薦する人が居るんだろうか。
あの人は大義の中で生きているのね。
私には計り知れない。
それともあの(顔だけ、無茶苦茶)皇子に関わると私もそんな風になってしまうのかしら。
そのうち私も悟りきって
「貴女もあいつに抱かれなさい。」
とか言い出すのかしら。
背筋に冷たいものが駆け上がって鳥肌が立った。
続き↓
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