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オグナ 小説(11)

↑ここまでのお話

それからはオトタチバナヒメに言われたからか私の周辺で小碓命を見かけることが多くなった。
いちいち声をかけてくる皇子に私はウザいと少々不敬な思いを抱いていた。
「ミヤズヒメはなかなかに情の強い女性なのですね。」
皇子は言う
「強情ですか。天叢雲剣の事は承りましたが、皇子にはオトタチバナヒメがいらっしゃるでしょう。あんなに綺麗で頭の良いお妃が近くにいらっしゃるのに何が不満なのですか?」
私たちは今、皇子の部屋で抜き身の天叢雲剣を挟んで対峙している。
「嫉妬か?」
皇子は相変わらずキラキラしい顔をしていた。
「はあぁ?」
「あいつの事は気にしなくて良い」
しょっちゅう目の前でイチャイチャしてるのに気にしなくて良いとはどういうことだ?
「アレは端女だから。」
聞いた瞬時に腹が立った
端女?
端女だと?!
ふざけんな!
下女だって言いたいのか、あの才女を。
間にあった剣を跨ぎ越えて皇子の頰を叩いた。手が開ききって無かったので中指と薬指がグキっと嫌な音をたてた。
「何をする!」
皇子の綺麗な顔に引っかき傷が2本できていた。
「自分のお子の母を下女と見下すんですね。」
とんだゲス野郎だったわ。
やっぱり顔だけ皇子
部屋から出ていこうとしたら手首を掴まれて引き倒されあっという間に組み敷かれた。
「まさか、あなたが怒るとは思わなかった。オトヒメが言ったんだ、自分は端女だと言えと。」
なんだと!
何、ヒトのせいにしてんだこいつ。
そんな分け無いだろ?あの人がそんな事を…、
あれ?
言う…かも?
あー、言いそうだ。
数えるくらいしか話したことが無いけど確かに私にそう言えくらいは言いそうな気がする。
「オトヒメは、私の為になることなら何でもする。本当に何でも。自分の事すら捨てかねない。」
皇子は私をじっと見つめて言った。
「ミヤズヒメはいい人なんだな。そんな事を怒るなんて。
オトヒメはミヤズヒメの事を気に入ったみたいだ。ミヤズヒメもオトヒメの事を気に入ったのだろう?」
はあ、冗談じゃない
「私はあんな得体のしれない人好きでは有りません。」
「そうか?この体勢でそんな啖呵が切れる君もなかなかのものだと思うよ。」
「じゃあ、どいてください。」
「嫌だ。」
あーあ、変な夫婦に見込まれたもんだ
どうすりゃ良いんだ。
「腫れてる」
パッと手首を掴んで自分の顔の前に手をかざして皇子は言う
見ると右手の中指と人差し指が少し赤くなっていた。
その掌に唇を寄せると
「冷やそう」
そのまま引っ張って立たされた。
うわ、何してんの。掌に口づけとか。
私は皇子に手を引かれるまま歩く。
顔が熱くてしょうがなかった。

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