異人館の神さま(15) 小説
「蒼真くん、忘れものよ」
細子は両手に持っていた青い靴を掲げて見せる
二人が出て行った後に残されていた靴だ
サイズ的に蒼真くんのものだろうと判断した
他に部屋に靴が紛れ込む要因もないし
「足大きいのね 身長伸びるよ 玄関に置いてくるね」
そういうとまたドアから出ていく
「彼女は細子さんです このたび僕の叔母さんになりました 仲良くしてあげてくださいね」
そういうと司はにっこり笑う
「暑かったでしょう?お茶を出しましょう 朝ご飯はお済ですか?」
「違う お兄ちゃん そんな子ども扱いしないで」
蒼真はソファにドスンと座る
居間と続きになっているキッチンから司の声が届く
「反抗期かい?」
「はっ?」
蒼真にはお盆に乗せられた氷の浮かんだ麦茶のコップが渇いた喉においしそうに思えた
差し出されるままに受け取って一息で飲み干す
「おかわり」
今彼にできる最大の反撃だった
「はいはい」
司には針の先ほども効かない
そのままおかわりを取りにキッチンに戻った司の声がまた居間の蒼真に届く
「ああ、そうそう」
二杯目の麦茶を手に戻ってきた司は蒼真にコップを渡すと彼の前に座り視線を合わせ、
「君が怖がると思って黙っていたんですけど、この家は出るんですよ」
「出る?」
お盆を膝にニコニコとしながら司は続ける
「ええ、実は夜中になるとどこからともなく笑い声が…」
「やめろよ 子供だましだろ」
強気な口調で言い返す蒼真の顔は真顔だった
確かにこの家は近所ではお化け屋敷という噂がある
大きな木々に囲まれたデカい洋館 敷地の中にはお墓もある
肝試しにはもってこい
そんな噂を蒼真も聞いた事があった
「おや、蒼真くんはそういうのは信じないたちなんですか?」
「…」
つづく