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アルルカン Ⅲ

3、ピエロ
しゃがみこみ泣いている私の前に誰かが同じように座った気配が有った
それから暫くして肩をとんとんと叩かれた
自分の状況にすっかりやさぐれていた私はほおっておいて欲しかった
なのでスルーした
もう暫くしてまた肩をとんとん
私はまたスルー
それからまた暫くしてとんとん
なんだこのお節介なヤツは

突如腹が立ち 睨んでやろうと顔を上げると
そこには白塗りの顔に赤いでっかい付け鼻
目の所に黒いバッテン
大きな口に赤いホッペ
貼りついたような笑顔
大きな帽子
ヒラヒラのついた派手な服

ヒィっ

余りの恐怖に涙が吹っ飛んだ

ピエロだ

焦って立ち上がって脚がもつれ後ろに倒れそうになった
ピエロは優雅な手つきで私を支えダンスをするかのように手を取り歩き出す
街路樹の間に設置されているベンチに滑るように連れられて行き座らされる
ピエロは両手を私の前で上下に2、3回振ると近くのコンビニに入っていった
待ってろって事か?
そういう事か?
そんな風に私が何も喋らないピエロの意思を図りかね、悩んでいる頃
やけに混んでいたコンビニではレジに並ぶピエロに居合わせた人々は騒然としていた
ピエロがコーヒーを2つを手にコンビニから戻った時には
私は感情や涙や恐怖に疲れボーッとしてしまっていた
ピエロが差し出したコーヒーを無意識に受け取り一口

熱かった

そんな事でも涙が溢れた
静かに泣く私にピエロは顔を近づけると指をパチンと鳴らす
するとどこからか赤い薔薇が一輪現れた
気取った手つきで差し出す
またパチン
薔薇が現れる
パチンパチンと薔薇が増えていく
どこからこんなにたくさん出てくるのか
両手で持ち切れなくなった時思わず笑ってしまった
私が笑ったのを確認したピエロは立ち上がりコミカルな仕草で拍手を求め
ポケットから2つ球を取り出してジャグリング
2つの球はそれ自体に生命があるかのようにピエロの手の中で動き回っていた
私とピエロの周りには少しづつ人が集まり
ピエロがうやうやしくお辞儀をして帽子を道路に置くとその中に数人がお金を入れていった

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