オグナ 小説(12)
↑ここまでのお話
注意:少しだけ衝撃的な描写があります。
水場で皇子は顔の傷を洗う。
私は木の桶に水を溜めてその中に手をつけている。
「私には双子の兄が居たんだ。」
顔を拭きながら皇子は言う。
「あのバカは大王の代わりに美人と評判の姉姫(エヒメ)と弟姫(オトヒメ)を迎えに行ってそのまま自分のものにしてしまった。そして大王に代わりを差し出した。」
それは思ったよりゾッとする告白だった。
「ある日、食事にも出てこない兄を連れてこいと大王に言われたんだ。
兄は自分でやらかしたくせにビビってた。」
皇子は私の顔を見てにやりと笑うと
「だから私は用を足そうと出てきた兄をボコボコにして手足を引きちぎって麻袋に詰めてそこに捨ててやったんだ。」
うーわ、とんでもないーって
「ボコボコにして手足を引きちぎってって、それ誰かわかんなくしてないですか?もしかして死んたことにした、とかじゃないですよね。」
皇子は、今度はにっこりと微笑み(顔がいい)
「あれ、初めてバレた。」
「はあ?やめてください。しれっとそんなとんでもない大罪の共犯者にするの。」
「実はオトヒメも知らない話で。」
皇子は笑顔のまま近付いてくる。
私は両手で耳を押さえて
「聞きたくないです。やめてください。」
「あはははっ。ミヤズヒメは楽しいね。」
「楽しくないです。」
「楽しいよ。君は私に可哀想って言わないから。」
張り付いたような笑顔のまま皇子はこれまでを語ってきたせてくれた。
兄を捨ててきたと大王に報告したらそれまでの行いのせいか思いの外怖がられてしまって熊襲を倒してこいと言われ
熊襲の討伐に行った。
あれはまた10代の頃だ。
なんだか守りが厳重で簡単には落とせそうもない感じだったから
遠くに行く前にもう会えないかも知れないと訪ねたおば(ヤマトヒメ)に貰った御衣と御裳を着て女童の髪型にして潜り込んで酌をしてやったらなんか気に入られて隙だらけだった。
そこの兄弟の兄の胸を切りつけた。
弟はビビって逃げたから階段まで追いかけて尻に剣を突き立ててやった。
出雲ではね、実力者と仲良くなったんだ。一緒に川に入るだろ、そうすると腰に付けてる剣も取る。
そこで「剣を取り替えっこしよう。」とあいつの剣を取り上げたんだ。
私が持っていたのは木で作った見た目が立派なだけの偽物であいつは剣が抜けない。
あとは簡単だったよ。
なるほど、兄さんが言っていた通りの人らしい。
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